愚か者の憧憬 |
ずくり。 背中の、何かが疼く感覚に、屈み込んだ。 気持ち悪い。気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。 胃液が胃を焼いて、凄まじい痛みと共に喉奥にその味を覚えた。 口の中には止める事も叶わずに溢れた唾液が溜まり、嘔吐する時はこんな感覚だと冷静な自分が脳裏に零した。 「うッ…う、うぇええ、え、かッ…」 びちゃびちゃと汚らしい音に伴って、食べ物は欠片も無い、薄黄色の液体が床に叩きつけられていた。 ひゅう、と喉奥から情けなくも掠れた空気の音が鳴って、思わず嘲笑が浮かぶ。 "わたしはきたない"。 そうだ、"両親たち"にもそう言われ続けて来た。 理由は沢山有って、その中の一つはきっと、そう… 「お困りですかな?」 「……だれ…」 「さあ、誰でしょう。そうですね、通り掛かりの紳士…とでも申して置きましょう。お嬢さん、立てますかな?」 「…うん」 綺麗な手袋に、粘つく液体を纏った手で汚す事は躊躇ったけれど、自称紳士らしい男性に手を引っ込める気配は無かった。 その手を握った瞬間に、きっと私の進むべき道は決まって居たのだと思う。 そうでしょう? Fiat eu stita et piriat mundus (正義を行うべし、たとえ世界が滅ぶとも) だ…誰だかお分かり頂けただろうか…。← 2011.01.01 |
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