読み終える度に、また一枚、また一枚とページを捲っていく。室内からは紙の擦れる音しか聞こえて来ない。 時計の針は十二時を指そうとしていた。 ふと視線を上げて時計を見ればもうそんな時間で、***はページに栞を挟んで読書を止めた。 布団を被り、眠りにつこうとした瞬間、枕元に置いていた携帯が鳴った。今人気の男性アーティストの曲。この曲で登録している人物は一人しかいない。 着信画面を見ればやはりその人からで、不思議そうに首を傾げた。 ――…こんな時間にどうしたんだろ……。 「……もしもし?」 『遅くにすまない、まだ起きてたか?』 「うん、起きてたよ」 『なら良かった。部屋の窓から外を見てみろ』 「?」 電話の向こうの相手に言われた通りに、携帯を持ったまま窓を開けた。 外の冷たい風が***の頬を撫でる。 そして彼女の瞳に飛び込んで来たのは、電話の向こうの彼だった。 『誕生日おめでとう、***』 「っ……!」 電話越しのその言葉に、***は思い出した。日付の変わった今日は自分の誕生日だと言うことに。 転びそうになりながら、寝巻きのまま急いで玄関まで走った。開錠して玄関を開ければ、深紅が視界を埋め尽くした。独特の甘い香が鼻孔を擽る。 「っ!…ば、薔薇?!」 「ああ、プレゼントだ」 少女漫画顔負けの薔薇の花束を渡され、***は思考がついていかず、立ち尽くしている。目の前の男がこんなベタな事をしているのが信じられないのだ。 「……嬉しくなかったか?」 「いっ、いや、嬉しいんだけど……。キリハがこんなベタな事するのかって驚いちゃって、」 「ネネにお前の喜びそうな事を聞いたんだ」 「それで…薔薇の花束、」 納得がいき、再度腕の中の花束を見ていると、段々と嬉しさが込み上げて無意識のうちに口角が緩んでしまう。 「ありがとう、キリハ!」 「お前の誕生日だからな。これ位当然だ」 彼の優しい言葉と嬉しさに涙腺が緩み、視界がぼやけて来た。 「…わ、私、嬉しくて死んじゃいそうっ……」 「っ…これ位の事で泣くな……!」 「だ、だってぇ……嬉しいんだもん……!」 突然の彼女の涙にあたふたし始めたキリハは、彼女の口を自分のソレで塞いだ。 暫くして唇を離すと、お互いの視線が宙で絡み合った。 「…落ち着いたか?」 「う、うん……大分」 「そうか、」 少し恥ずかしいのか、二人は頬を赤くして視線を逸らす。 ***が上目遣いでチラリとキリハを見れば、そこで視線が合った。 「……キリハ」 「なんだ」 「…ありがとうっ」 「あ、ああ」 彼女の幸せそうな笑みに、キリハは頬が緩んだ。 夢現つに溺死 title:postman ------(11/08/14)------ シチュエーションはお任せとの事でしたので、年齢捏造(高校生位)、誕生日ネタで書かせて頂きました。甘になってます…よね……? 丸原様、こんな幼稚な話で良ければ貰ってやって下さい(´`) →res 無茶しない程度に早めの更新を心掛けていきたいと思います!丸原様も時節柄ご自愛下さい(´ω`) これからもFoolを是非ご贔屓に(笑) この度は企画参加有難うございました! |