「ねえ、ドーラク」 「どうした」 静寂の中、口を開いたのは***だった。 彼女は、ふわふわとは程遠いベッドの上に寝転び、暇そうにしている。対してドーラクは、幹部らしく上に提出する報告書を書いていた。 ***の呼び掛けに、ドーラクは手元から視線を逸らさずに応える。 ドーラクのそれに、***は少し不機嫌そうに顔を顰め、続けて言った。 「蟹が食べたい」 「蟹?俺の部下は絶対に食うなよ」 「食べちゃダメなの?」 「当たり前だ」 ドーラクが仮面越しにちらりと***を見れば、「面白くない」と言わんばかりの表情でこちらを見ていた。 しかし、手元にある書類の提出期限は明日の朝礼会議の時だ。書けるのは、仕事が終わった今だけの為、***をそのままにしてドーラクは止まっていた手をまた動かし始めた。 暫くして、ベッドの軋む音がしたと思えば、手元に影が落ちた。 「どうし……テメッ……!」 「ドーラク、私蟹が食べたい」 歩み寄った***が、いきなりドーラクを床に押し倒した。今は、彼女がドーラクの腹に跨がっている。突然***が訳の分からない事を言い出すのはいつもの事なので、ドーラクは特に抵抗しなかった。 「蟹なんて館長に強請ればいいじゃねぇか」 「ドーラク、ミソ詰まってる?」 「はぁ?何言ってんだお前」 「肝心な事忘れてない?ドーラクも蟹だって」 ***のその言葉に、「そうだったな」とドーラクは内心頷いた。 長い間この姿になっていると、自分が唯の蟹だと言う事を忘れてしまう。トラブルメーカーとも言える***と一緒にいれば尚更の事で。 「俺を喰うか?」 「ドーラクが死んだら喰べてあげる。でも今は、違う意味で食べるから」 にんまりと、愉しそうな笑みを口許に浮かべた***は、ドーラクの制服を脱がしにかかる。 流石にマズイと思ったドーラクは、腹の上にいる***を押し倒した。 「調子に乗るなよ」 「人間が蟹に食べられるなんて、滑稽な話だと思わない?」 「今はクラゲだろ、***」 「そうだったね」 そう言って笑う***。ドーラクは溜息を一つ吐き、書類は期限通りに提出出来ないと悟った。 捕食者はどっち? (110511.私が書きやすい様な話……との事でしたので、攻めヒロインにしてみました!全く攻めていませんが………(・ω・`) 時間をかけた割には、なんだかよく分からない話で申し訳ありません(´`;) 楼凛様!企画参加有難うございました!) |