スーパーでも館長は館長だった。私が野菜を見ている傍からカゴに一番高い野菜を入れ、更に一番高い肉を入れたりと、正に子供のような行動をとる。魚を見ては寿司と言う館長に、パックの寿司を渡すと殴られた。どうやら高い寿司でないと駄目らしい。

時間がかかったものの、無事スーパーから帰ってきた。館長の荷物は一旦1階の和室に置くことにした。



「館長、部屋着とか買ったなら着替えて下さい。そのスーツ、クリーニングに出すので」

「ああ、」



館長はそれだけ和室に入っていった。館長が着替えている間に、シチューを作ってしまおう。

いつも通り二人分の野菜を切っていく。鍋に水と切った野菜、鶏肉を入れ、火にかける。一煮立ちするまでローカルテレビを観ながらサラダを作る。作ると言ってもトマトを切ったり、缶詰のシーチキンを器に出すだけだが。

サラダ等を作り終わり、鍋にシチューのルーを入れ、後は煮込むだけ。すると和室から館長が出て来た。



「おぉ………、」

「なんだ?」



自分でも分かる程間抜けな声が無意識に漏れた。ただ純粋に館長が格好良かった、それだけ。シンプルに黒で纏めた服は館長に似合っていて、まるでモデルの様だ。今だに館長に見取れていると、頭を叩かれた。



「痛っ!」

「間抜け面」

「酷い!」



叩かれた頭を片手で押さえつつ、もう片手に携帯を持ち、館長をカメラで撮った。



「勝手に撮るな」

「良いじゃないですか!記念です、記念!」



盛大に眉間に皺を寄せる館長に対し、私は笑いながら……いや、ニヤケながら撮り続けた。



「おい」

「なんですか?」

「焦げ臭い」

「焦げ…………あ!!」



携帯をソファに放り投げ、鍋へと駆け寄った。が、時既に遅し。まるで漫画の様にシチューは黒く焦げ、食べれる状態ではなくなっていた。無残な姿に変わってしまったシチューの前で肩を落としていると、館長に肩を叩かれた。

もしかしたら慰めてくれるかも、という淡い期待を抱きながら振り返る。しかしそこには電話帳と携帯を持った館長がいた。



「晩飯は寿司だよな?」



あのにこやかな営業スマイルを浮かべる館長に、私は涙ながらに頷くしかなかった。








    
      
     
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