「つ、疲れた………」



私はぐったりとテーブルに伏せた。女の買い物に付き合わされる男の気持ちが分かった気がする。

はっきり言って館長は金遣いが荒かった。私の財布を片手に、ふらっと消えてしまう。見付けた頃にはカードで勝手に買い物をしている始末。そして今も私を残してどこかに行ってしまった。

でもそんな館長の横顔はなんだか楽しそうに見えた。やはり人間に戻った事が嬉しいのだろうか。

また館長を探しに行こうと立ち上がり、顔を上げると遠くの方に館長が居た。すたすたと、こちらに向かってくるのが分かる。



「館長!何処に行って……」

「ほら」

「……珈琲?」



館長に渡されたのはスタ○の珈琲。それと一緒に私の財布も返ってきた。館長の手には私が持っているものと同じものを持っている。



「俺が飲みたかったから買ってきただけだ」



館長はそれだけ言って、隣の椅子に座り、珈琲を飲みはじめた。



「あ、ありがとう…ございます……」



私のお金で買った珈琲だからありがとうはちょっと違う気がするけど、私の分も買ってきてくれたから、まあ良しとする。

珈琲を飲みながら、今晩の夕食を考える。考えると言っても、必然的にカレーかシチューになってしまうが。最近カレーを作ったから今日はシチューだ。

何故か私が荷物を全て持ち、駐車場まで向かう。館長は手ぶらで悠然と歩いている。後部座席に荷物を積み込み、車に乗り込むや否や、館長はまた寿司が食べたいと言い出した。



「何と言おうと、今日はシチューです」

「…………チッ」

「舌打ちしてもだめ!」



館長の無言の睨みに堪えながら、私は自宅近くのスーパーまで車を走らせた。








      
    
      

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