「アンタ、二次元にしか興味無いんじゃなかったっけ?」

「有架がイケメンと買い物なんて……明日は雹が降るかも」



茶髪でショートカットの美穂は、ス○バの珈琲を片手に私に言い寄ってくる。長い黒髪の沙羅はサーティ○ンのアイスを食べながら私と館長を交互に見ている。どちらも同じ大学に通う親友だ。



「べ、別に私が誰と買い物しようが関係な……」

「関係大有り!周りがリア充ばっかりだから、アタシ達だけでも二次元の住人でいようって約束したじゃない!」

「有架、約束破るの?」



ジト目で私を見てくる二人に堪えられなくなり、隣の館長を見ればそこに館長は居なく。辺りを見回せば近くのお店で服を見ていた。しかもいつ取ったか分からない私の財布を持って。私が一人困っていると、美穂と沙羅が突然笑い出した。



「やっぱ有架をからかうの楽しー」

「んなっ!」

「でもアンタが架絃くん以外と買い物なんて衝撃的よ?」

「そんな大袈裟な……」



ケタケタと笑う美穂。すると、黙っていた沙羅がぽつりと言った。



「あの人、どっかで見たような……」

「え!」



息が止まりそうになった。沙羅は買い物している館長をまじまじと見ていてる。



「た、他人の空似じゃない?」

「んー………」

「アタシもなんか見たような……」

「美穂まで!」



沙羅は勘が鋭い、しかもWJの愛読者だ。美穂も深くは読んでいないが目を通す事はしている。となると、二人とも一回は館長を見ているという事になる。いくらマスクとコートが無いと言っても、二人なら思い出す可能性が大だ。



「あ、分かった。オーマガの館長だ」

「アタシそれ読んだ!」



もう、終わりだ。きっと私は二人から質問攻めにあうのだろう。すると案の定二人は先程よりも私に寄ってきた。



「ズルイ有架!」

「彼氏がレイヤーさんなんて」

「………え?」



沙羅の言った「レイヤー」という言葉が脳内に反響する。言葉を失っている私を他所に、二人は盛り上がっている。



「付き合うなら同士が良いよねー」

「同感。有架が羨ましい」

「アタシらも有架を見返す為に来月のコミケも行く?」

「勿論」



口を合わせて「羨ましい」と言っている。どうやら館長をコスプレイヤーと勘違いしているようだ。でも良かった。これで逆トリがばれずにすんだ。



「有架、行くぞ」

「う、うん」

「じゃ、彼氏とお幸せにー」

「次は復活の風紀委員長希望」

「……つ、伝えておくよ。それから彼氏なんかじゃないからね!」



「嘘つけ!」と美穂に囃し立てられたが、館長の腕を引っ張りその場から逃げた。







      

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