「一人で住んでるのか?」

「いえ、今は弟と二人です」



私達はリビングに下りてきた。どうやら館長は自分が置かれている状況を既に飲み込んだ様で、あまり私に質問してこない。

私は珈琲を容れる為に久々にキッチン立ち、お湯を沸かす。館長は飾ってある家族写真を見ている。



「両親は海外旅行中、弟は今日から合宿でいないので遠慮しないで下さいね」

「そうか、」



私のその言葉に館長はトレードマークともいえるコートを脱ぎ、ソファーに座った。更にはネクタイを緩めながらテレビをつけ、完全に寛ぎだした。館長ってこんなキャラだっけ?



「有架、飯」

「っ……!と、取り合えずそこにあるパン食べてて下さい」



突然名前で呼ばれ、驚いてビクリと肩が震えた。館長に名前を呼ばれ天にも昇れる気になったが、直ぐに現実に引き戻された。

私は料理が出来ない。まともに出来る料理はカレーとシチューぐらいだ。後は料理本等を見ないと何も作れない。だから咄嗟に私の朝食となるはずだった菓子パンを館長にあげた。

何も言わずにテーブルの上に置きっぱなしになっていた菓子パンを食べ始めた館長を見て、胸を撫で下ろした。

お湯が沸いたので、食器棚からマグカップを二つ取り出し、珈琲を容れた。館長のはブラックで、私は自他共に認める甘党だからミルクと砂糖を大量に入れた。



「インスタントですけど、よければどうぞ」

「ん、」



テレビを見ながらパンを食べている館長の前にコトリとマグカップを置いた。珈琲や紅茶を容れる位なら流石の私にだって出来る。

マグカップを置いた流れで、私は館長の隣に座った。



「買い物行かないとな……」

「買い物?」

「館長の日用品を買いに行こうかと、」

「俺も行く」

「言うと思いました」



壁掛け時計を見れば、もう11時を回っていた。館長はパンだけでは物足りなさそうにしているから買い物の途中にお昼を食べて行くとして。館長の服の好みが分からないから少し遠いけどモールに行くことに決めた。








     
       
     
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