「それじゃあ、行ってくるけど……。餓死するなよ、姉ちゃん」 「何言ってんの!」 今日から8月。まだ朝の6時だと言うのに、外は暑く、額からは汗が流れる。 私より頭ひとつ分以上背の高い架絃は、私の母校でもある高校のバスケ部のジャージを着ている。 今日から架絃はバスケ部の夏の強化合宿だ。一週間の合宿の為、荷物も相当な量なので、私が学校まで乗せてきてやったのだ。 「だって姉ちゃん、いい歳して満足に家事も出来ねーじゃん」 「わ、私だってやれば何でも出来るんだからね!」 私は今年で二十歳になった。一応、大学生。車の免許も取っている。 架絃の言う通り、私は家事が苦手だ。料理も満足に出来ない。そんな私と生意気な架絃を日本に残して、父さんと母さんは海外旅行に行った。いつ戻って来るかも分からない。けれど、二人が置いていってくれた貯金がある為不自由は無い。 「餓死も嫌だけど、ジャンプで埋もれ死にとかもやめてくれよ」 「ジャンプが私を殺す訳ないでしょ!?」 「…………」 「そんな目で私を見るな!」 「……まあ、危なくなったら隣のオバサンを頼れよ。じゃあ、行ってきます」 「…行ってらっしゃい」 架絃は大荷物を持って、バスに向かって歩いて行った。 ポケットに入れていた携帯を取り出して時間を確認すると、まだ6時10分だった。取り合えず帰りにコンビニに寄って、今日発売のジャンプと朝ご飯を買って帰ろうと思う。 |