私もお風呂に入り、タオルを頭にかけたままリビングに戻ると、館長が新聞を読んでいた。

館長の姿を見て、先程の出来事が脳裏を過ぎる。またしても心臓が高鳴る。

しかし、そんな事は館長の濡れたままの髪を見て一気に吹き飛んだ。



「館長……!髪乾かして下さい!」

「髪……?自然乾燥でいいだろ」

「駄目ですよ!風邪引かれても困ります!」



ソファーに座る館長の後ろに回り、傍に置きっぱなしのタオルで館長の髪を拭く。

風邪は万病の元。館長はこちらの人間じゃないから保険証なんてある訳もなく。病院につれて行ったらかなりのお金がかかる為、なんとしても阻止しなければ。



「痛くないですか?」

「大丈夫だ」



ワシャワシャと髪を拭く。暫くすると、館長が欠伸をした。



「眠いですか?」

「………ああ、」

「もうちょっと待って下さいね」



洗面所からドライヤーを持って来て、今度はドライヤーで乾かす。大分乾いていたので、差ほど時間はかからなかった。



「はい、終わりましたよ館長」

「………ん、」

「今日は和室で寝てください。布団は敷いてあるので」

「………分かった」



館長はリビングを出ようとした時、思い出したように振り返った。



「有架」

「はい?」

「おやすみ」

「……っおやすみなさい!」



館長は笑顔で「おやすみ」と言ってリビングから出て行った。あの笑顔はきっと気まぐれなのだろう。でも………。

やばい、鼻血出そう。






       
      
   


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