赤と緑のクリスマスカラー一色に染まる街並み。流れるのは定番のクリスマスソング。

子供達はプレゼントに心躍らせ、恋人達は愛を深め合う、年に一度の大イベントとも言えるクリスマスが明後日に迫っていた。

そんな中で、クリスマスに浮かれた人々が行き交う街をイオンは憎たらしそうに眺めている。



「…何がメリークリスマスだってのっ……!」



そう呟いた彼女の眉間に皺が寄る。誰がどう見てもイオンは苛ついていた。今関わると面倒なので、レンとアイルは離れた場所から彼女を見ていた。



「何でイオンあんなにキレてる訳?」

「友達が皆クリスマスは恋人と過ごすから、らしいわよ」

「それでクリスマスは独りきりって事か。アイル、付き合ってやれよ」

「悪いけどもう予定が入ってるの。レンこそイオンに付き合ってあげなさいよ」

「俺だって暇じゃないんだけど」



二人の会話はイオンに丸聞こえだった。



「何なのよ二人して……」

「イオン」

「…リョウマ、」



今し方デジクオーツから現実世界に戻って来たリョウマは、真っ先にイオンに声をかけた。



「良いデジモン、ハント出来た?」

「いや、今日は何だか不調でね」

「へー……リョウマにしては珍しいね」

「そんな事はないさ。……所で、クリスマスは何か予定があるかい?」



デジクオーツにいたリョウマは先程の出来事など知らずに彼女の地雷を踏んでしまった。瞬時にそう思ったレンとアイルだったが、イオンは意外にも大人しく応えた。



「そんな事聞いて、リョウマも私を笑うんでしょ?」

「笑う?まさか。私はただ純粋に君の予定を聞いているだけだよ」



イオンが少し敏感になり過ぎているのか、リョウマの言葉を警戒している。



「……空いてるよ、」

「それは良かった」

「え?」



リョウマはポケットからチケットを二枚取り出した。



「実は偶然、クリスマスコンサートのペアチケットが手に入ってね。良ければ一緒に行かないか?」

「クリスマス…コンサート……」



それは、前々からイオンが行きたいと話していたコンサートのチケットだった。



「で、返事は?」

「…行く、行きたい!」



無邪気な笑顔を浮かべたイオンの姿に、リョウマは胸を撫で下ろした。



「でも意外かも。リョウマってモテるからクリスマスは予定が入ってると思ってたから」

「そんな事ないさ」

「リョウマでもクリスマス暇なんだねっ」

「……は?」



イオンはリョウマの言葉を素直に信じた為、これがデートの誘いだと全く気付いていない。



「うわっ、やっぱり気付いてない」

「あの子、自分の事に関してはホント鈍いわね」



レンとアイルの言葉は二人に届いていない。リョウマは彼女の言葉に呆気に取られたが、すぐに平然を装った。



「コンサート楽しみだなーっ」

「君を誘った甲斐があったよ」



――…一緒に行けるだけでも良しとするか……。     






ホワイトクリスマスの憂鬱
Title:リコリスの花束を
    






------(11/12/20)------
もうすぐクリスマスなので(´ω`) チケットを入手するのに苦労したとかしなかったとか←



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