屋上へと続く階段を一歩ずつ上がっていく。その度に手に持った鍵がジャラジャラと音を立てる。

屋上の扉を合鍵で開けて一歩踏み出すと、外の心地好い風が頬を撫でた。

探していた人物はすぐに見付かった。呑気に座りながらお気に入りのアップルジュースを持って景色を眺めている。



「会長、仕事が溜まってますよ」

「良く此処が分かったね。イオンくんも一緒に景色でも眺めない?」

「馬鹿言わないで下さい。全く……副会長を宥める私の身にもなって下さいよ」



爽やかな笑みを浮かべながらそう言った会長は、全く自分の立場を分かっていない。会長が姿を消す度に苛つく副会長を宥める役は私に回ってくる。



「皆優秀だから、僕が居なくても何とかなるでしょ」

「何とかならないから探しに来てるんです……!」

「それは困ったねえ」

「さ、一緒に生徒会室に戻りましょう」



そう言ってみるが、会長は全然動こうとしない。一体私になんの恨みがあると言うのだ……!



「イオンくんは可愛いんだから、眉間に皺なんて寄せちゃ駄目だよ」

「な、何言ってるんですか……!そんな冗談言ってないで……」

「今のは僕の本心」



そう言ってにっこりと笑った会長。きっと色んな子にも同じ事を言ってるのだろう。だから副会長も会長の事が好きなんだ。陰でこっそりファンクラブまで出来ている理由が良く分かった。本当、罪な人だ。



「どうせ他の子にも同じ事言ってるんでしょう?」

「まさか、こんな事言うのはイオンくんだけだよ」

「会長の言う言葉は信用出来ません。私じゃなく彼女さんに言ってあげて下さい」



いい加減会長を連れ戻さないと副会長に怒鳴られてしまう。手は無いものか……。



「それが彼女はいないんだよねー。イオンくんが彼女なら嬉しいな」

「はいはい、だったら他の子に言ってあげて下さい。喜びますから」



段々相手をするのが面倒になって来た。もう無理矢理にでも連れて行こうと、会長の腕を掴んだ。……が、



「っ……!?」



引っ張る所か逆に腕を引かれ、目の前には会長の整った顔。聞こえてきたリップ音の後に、林檎の味が口一杯に広がった。全く理解出来ないが、何故か会長にキスされた。



「……な、何するんですか!」

「僕が本気だって事分かってくれたかい?」

「っ……、分かりましたから!早く戻りま……」

「あれ、返事はしてくれないのかな?」

「……こ、これからの行いで決まります!」

「じゃあ真面目に仕事しないとね」



真面目に仕事をする気になったのか、やっと立ち上がってくれた。でも今の私には仕事なんかどうでも良くて、何で会長が私なんかを好きなのか気になって仕様が無い。



「イオンくん、顔、林檎みたいに真っ赤だよ?」

「う、煩いっ!…です!」
     




屋上の鍵の秘密
Title:リコリスの花束を
《懐かしきスクールデイズ 5題》

     




------(11/12/05)------
お題とは全く関係無い話になってしまいました……が、楽しく書けました(^ω^) 「イオンくんが彼女なら〜」の件は、告白のつもりで言ってたり言ってなかったり←



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