「ただいま戻りました」
リビングのドアが開いて、珀が帰ってきた。
珀はキッチンにいる俺達を見て、驚いているようだった。
「あ、珀おかえり!ごめん!エプロン借りてる!」
「珀、おかえり」
「…いえ、それは構いませんが…」
珀はキッチンに入ってきて、雷の後ろからフライパンを覗き込んだ。
そして、いつものように綺麗に笑った。
「おいしそうですね、炒飯ですか?」
「うん!みんなで食べよう!って、あれシスイは?」
「シスイ様は別件で。昼食の準備を頼まれたんですが、必要なさそうですね」
珀はそう言って、俺にも笑いかけながら冷蔵庫を開けた。
何個か野菜を取り出して、洗い出す。
「青炎もサラダ作り、手伝ってくださいませんか?」
と珀はまたにこりと笑って言う。
俺はそれに大きく頷いて、珀の横に並ぶのだった。
* * *
あれから、皆帰ってきて、昼食となった。
食卓の上にはホカホカと湯気の上がる炒飯。
珀と作ったサラダ。(今回は中華風のドレッシングだと珀が言っていた。)
それから中華スープも珀の力作。
少しトロミがついてて、美味しそうだ。
「え、雷と青炎が作ったの?!めっちゃうまそう」
「炒飯とかすげぇ久々に食う」
奏と獅闇が炒飯を覗き込んでいた。
そして全員が席に着いたことを確認すると、シスイがいただきますと挨拶をしてみんなが食べ始める。
「うまい」
「おいしいよ、青炎、雷」
牙も一言そう言って、黙々と食べているし、シスイもにこにこと笑って食べてくれている。
おいしいって言ってもらえることがこんなにも嬉しいなんて思わなかった。
ふと隣に座っている雷と目が合った。
雷は可愛くウインクをして、炒飯を頬張った。
それに倣って、俺も一口食べる。
ちょっと辛いけど、美味しいと思う。
「とてもおいしいですよ、雷、青炎」
「はい、それに俺のエプロンも似合ってますしね、青炎」
「おや、私のエプロンも似合ってますよ、雷」
珀も海輝もにこにこと笑って、俺達を見てくれた。
なんというか。
いつもとびきり美味しいご飯を作ってくれているこの2人に褒められると、とても誇らしくなるのは俺だけじゃない。
と思ったのは雷の顔も照れくさそうになっているのを見たからだろう。
少し、顔がにやけそうになるのを悟られないように俺はまた一口炒飯を頬張った。
きっとこれが「照れる」ということなのかもしれない。
それでも料理はとても楽しかった。
そうだ、今度は珀たちに教えてもらおう。
そう思いながら初めて飲んだ中華スープはすごく熱くて、舌を火傷しそうになったのは内緒の話。
<終>
→あとがき
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