「雷」
俺はリビングのソファで寝転んで雑誌を読んでいた雷に声を掛けた。
生憎、今日は家に俺と雷しかいなく、教えてもらえるのが雷しかいない。
しかし。
雷が頼りないとかそういうことを言っているのではないということを分かってもらいたい。
決して。断じて。
「んー?」
雷は雑誌から顔を上げて、俺を見ながら返事をしてくれた。
そんな雷の元まで歩み寄り、先ほどの冊子をずいっと目の前に突き出した。
「はじめての、料理?」
「うん。雷、料理って、俺、にもできる…?」
先ほどここまで来る間にペラペラと捲って中を見てみたが、どれも美味しそうで、何より自分が見たことのない料理ばかりで胸が高鳴った。
どうやら、これはそれの作り方が載った冊子らしく調味料らしき名前がたくさん書いてある。
俺も作ってみたい。
見ていくたびにそう思って、雷に相談しにいったのだった。
「うーん…作れないことないと思うけど、僕も料理は苦手なんだ…いつも珀とか海輝が作っているしね」
雷は眉根を寄せながら、俺からその冊子を取ってパラパラと見ていく。
すると、とあるページでその手が急に止まった。
俺は雷と一緒になってそのページを覗き込んだ。
そこに載っていたのは。
「これなら僕たちでも作れるかもしれないね」
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