「ただいまー」
「まぁ、適当に座って。そこのソファーでもいいし、食卓の椅子でもいいよ」
「お、お邪魔します…」
『お邪魔しまーす』



雷の後に続いて入っていった疾風は恐る恐る奏たちの家に足を踏み入れた。
キョロキョロと辺りを見回しながら、一歩一歩前に進んでいく。


その様子を見ていた奏は苦笑しながら、キッチンに入っていきお茶の準備をする。
雷士を頭に乗せながらここまで来た雷は、よいしょと雷士をソファーの上に下ろし自分も隣に座った。



「?疾風くんもこっちへどうぞ!」



雷は疾風に笑いかけながら、ポンポンと自分の逆隣を示した。
彼は一つ頷くと、そこに腰掛ける。

ふわりとソファーが少し沈み、心地よい。
その感触に思わず笑みが溢れた。


すると、雷士が辺りを見回して、雷に聞いた。



『あれ、シスイさんは今日はいないの?』
「うん、シスイは出かけてて帰りは遅いって言ってたよ。他の人たちも皆出かけちゃったー」



留守と買い物、頼むね。



そう伝言を残し、この家の主人は朝から珀を連れて出かけてしまった。
買い物は専ら奏の役目なので、雷は雷でいつも行く近所のお店へと行ったのだ。


そしてその帰りに先ほどの出来事に遭遇したということなのだが。



「あ、あの!本当にありがとうございました!雷さんも奏さんも…!」



いきなり疾風が立ち上がったかと思うと、すごい勢いで頭を下げた。
さらりと綺麗な緑の髪が揺れて、肩から落ちる。


雷はそれをしばらく呆然と見ていた後、目を細めて手を差し出した。
首をかしげる疾風。

雷は疾風の手を取って、自分の手と握手をさせた。



「はい、あーくしゅ!これからよろしくね!疾風くん!!」



雷、でいいよ!


えへへと笑う彼は、雷士の手とも握手をして、“雷士もー!これで正式にお友達だね”とご機嫌がいいようだ。
雷士も小さい手ながら握り返して、『う、ん。よろしく、雷、奏さんも…』と少し照れたように言った。



「!はい!!ボクも疾風、でいいです!」
「あーずるいなあ!俺も仲間に入れてね」



とトレイにティーポットとカップを乗せて持ってきた奏は綺麗にウインクをして、テーブルに置いた。
カップにこぽこぽと注ぐと、ダージリンティーのいい香りがふわりと広がり、
そしてその横に置いてあったチーズケーキに雷達は目を輝かせた。


この焼き加減、いつも使っているクリームチーズの香り。
間違いなく奏が作ったものだと確信した雷はヨダレが出そうになるのをなんとか堪えた。



「これ!奏の作ったチーズケーキ!すっごくおいしいんだよ!二人も一緒に食べようね!!」
「は、はい!!ありがとうございます!ご馳走になります!!」
『おいしそう…』
「たくさんあるからね」



3人(2人と一匹?)でチーズケーキを覗き込む様子を微笑ましく思いながら、奏はナイフを持って切り分けていくのだった。









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