『(もぐもぐもぐ…)』
あれから、『おなか…すいた…』という雷士の呟きに安心した一同。
今まで座っていたベンチに皆で座り直して、雷は持っていた肉まんを雷士に分けてあげた。
雷士は鼻をくんくんさせると、それをお礼を言って受け取り無言で食べ始めた。
よかった。
どうやら、ただ本当に空腹で倒れていただけのようだ。
雷は疾風と奏にも肉まんを分けてあげて、自分も頬張った。
「あ!改めて!僕、雷っていいます!雷士とはこの前ばったり会ったんだよね!」
そう言って、自分の膝に座っている雷士に目を向けながら、言った。
雷士は雷を見上げながら、耳をひょこひょこと動かした。
『あ、うん。あの時もありがとう』
「どういたしまして!」
そしてにこにこと笑いながら疾風の方を向いて自己紹介をした。
疾風も少し安心したのか、ふわりと小さく笑いながら会釈をした。
疾風の逆隣に座っていた奏も彼の頭をくしゃりと撫でながら、自己紹介をする。
「えー…っと。俺は奏。雷の家族ね。君は疾風くん、で、ピカチュウの彼は雷士くんでいいのかな?」
改めて確認するようにそれぞれに目線をやりながら、聞いた。
その言葉に疾風も雷士も頷くと、そっかと笑い、また一口肉まんを頬張った。
事情は先ほど、疾風から聞いたばかりなので恐らく雷士も同じような理由だろう。
そう踏んだ奏はとりあえず外にずっといるわけにもいかないと、家に案内することにしたのだった。
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