ある夜のお話。



皆、寝静まった夜。
食卓の上の電気だけが付き、仄かに明るい室内。



電気が消されたリビングの窓からは月明かりが差し込み、何とも幻想的な雰囲気を醸し出す、ここシスイの家。



「獅闇?」



少し低めの声が響き、食卓のイスに座って何かを飲んでいた獅闇はふと顔を上げた。



さらりとした銀髪、薄い赤の双眸がきらりと光った気がした。
そして整った顔立ちが薄暗い室内の仄かに灯る電気に照らされて、余計綺麗に見えた。



「珀か」



そしてこの世のものとは思えないほど甘い甘い声。
顔を上げたときに漆黒の少しボサつきのある髪がパサッと揺れた。



「何を・・飲んでいるのですか?」
「ああ、チューハイ」
「こら、未成年は飲酒禁止ですよ」



珀は少し眉間に皺を寄せて言った。
獅闇はふっと息を吐き“んな堅い事言うなよ”と珀に向かって何かを投げた。



「お前も飲もうぜ」
「…はぁ…仕方ないですね」




珀はそれを器用にキャッチして、獅闇の向かいに座った。




「いつも一人で飲んでいたんですか?」
「いーや。今日はたまたま」



急に飲みたくなって、今日買い物に行った奏に頼んだんだ、コレ。

獅闇は缶を指差し笑った。



するとまた別の声がリビングに響いた。






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