昼下がりの時間




お昼のリビング。
ソファには二人の影。



“あなたのことがずっと好きだったの…”



テレビの中では、綺麗な女優が迫真の演技を見せている。
いつも昼下がりにやっているドラマ枠は、視聴率もなかなか良く、
この時間帯にやっているドラマから、どんどん俳優、女優として名を馳せていく人が多いことでも有名であった。

世の奥様方がこぞってテレビに食いつき、物語の行く末を見守る中、ここにいる二人も例外ではなかった。


ピタリと肩を寄せ合い、各々クッションを抱きしめながら、真剣にテレビを見つめる。
時折、ゴクリと唾を飲み込む音すら聞こえてくる。



「あー、この人、最近よく出てる俳優か」
「奏、うるさい!黙って!」
「ごめん」



思わず声に出してしまった奏をすかさず咎めるのは、毎日このドラマを楽しみにしている雷。
ギッと奏を睨みつけてから、すぐ画面に目線を戻した。
今まさに、話の核心へと進んでいっているのだ。
少しの声の邪魔も許したくない。


奏はやれやれと小さくため息を吐き、食卓の椅子に深く腰掛けた。
すると、目の前に奏専用のマグカップが置かれ、彼は視線を上げた。



「どうぞ」



彼らの邪魔をしないように、微笑みさえ小さくしながら、珀は奏の向かい側に腰を下ろした。
ふわふわと湯気の上がっているコーヒーを奏はお礼を言いながら一口飲む。
ほろ苦いフレーバーが口いっぱいに広がって、何故だか酷く落ち着いた。

いつもは牙がコーヒーを淹れてくれるのだが、今日は出払っている。
いつもと違う味だが、これはこれでとても美味しい。
珀はなんでもできるなぁとしみじみ思いながら、また一口口に運んだ。



テレビでは相変わらず、今話題の俳優と女優の絡みが進んでいる。



“ごめん…その気持ちには応えられない…!!”
“どうして…!?”
“だって、俺達は…!!”



途端にエンディングに切り替わるドラマ。
主題歌も勿論、人気絶頂のバンドの新曲。
愛を歌うバラードが流れる中、雷は項垂れた。



「ええー!めっちゃ気になるところで終わったー!!」
「本当。大体予想はつくけど、このドラマも意外なところに展開を持っていくからわからないわね」
「そうだよね…あーあ!明日の楽しみだなー」



ポーンと抱えていたクッションを投げ出して、ソファの背もたれに埋まる雷を横目に、
シスイもいつの間にか目の前に置いてあったアイスティーに気づいて、珀に微笑んだ。



「ありがとう、珀。よく私がアイスティー飲みたいってわかったね」
「どういたしまして。今朝、アイスティーの気分かなと仰っておりましたので。
朝から冷たいものですと、お腹が冷えてしまいますから。今が丁度良いタイミングだと思ったまでです」



珀も綺麗に微笑み、キッチンに戻っていった。
きっと、昼食の準備をするのだろう。



「シスイー、あとで買い物行かなーい?久しぶりにシスイの洋服見立ててあげるよ!」
「本当!?嬉しい!」



奏の言葉にいち早く反応した雷はガバッと起き上がり、シスイを後ろから抱きしめて奏を見る。



「ずっるい!僕も行く!」
「はいはい。ついでに雷の洋服も買おっか」
「はあ?ついでとか奏のくせにー!」



むきーっと怒る雷に苦笑しながら、シスイは立ち上がって食卓の椅子に移動した。



「その前に少し遅めのお昼ご飯、食べちゃいましょうか」




手際のいい珀のことだ。
そろそろ出来上がってしまうだろう。


シスイの提案に雷も奏も頷くと、椅子に座り直した。




今日も変わらない日常が過ぎていく。






(終)


なんら変わらない彼らの日常をふと書きたくなって、短編にて書きました。

ちなみに獅闇と青炎と海輝は昼寝中です。(笑)





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