その日は意外と気温が高く、加えて人の熱気のせいか、じんわりと汗が滲んでくるくらいに暑かった。
雷は額を流れてきた汗を腕で拭うと、さっき買った冷たいミックスオレを喉に流し込んだ。
“買い忘れがあったから、ちょっと行ってくるわね”
そう言ったきりなかなか帰ってこない主を待ち続けて、そろそろ30分が経とうとしていた。
このままいけば、1時間は経ってしまうのではないだろうか。
ベンチに座って足をブラブラさせながら、何とはなしに周りを観察しながら暇を潰す。
ポケモンと飲み物を飲んだり、自分と同じようにベンチに座ってボーッとしたりしている人がいる中で、雷はふと自分の方をチラチラと見ながら、なにやら話をしている女の2人組を見つけた。
嫌な予感がする。
奏がいつの日か言っていた。
“嫌な予感ほどよく当たる”のだと。
雷は気付かない振りをして、彼女達を視界に入れないように残っていたミックスオレを一気に飲んだ。
少し温くなっていたが、そんなことは気にもしないくらいにドキドキしていた。
すると、視界の端にあの女達が自分の方に向かってきているのが見えて、頭を抱えたくなった。
できれば、関わりたくはないのだが。
「ねぇねぇ」
そんな思いもむなしく、女のうちの一人が雷に話し掛けてきた。
とても派手なメイクと洋服、アクセサリーをジャラジャラと付けていて、極めつけに噎せ返るような香水の臭いに鼻を摘まみたくなった。
雷は思わず顔を歪めてしまったが、そんなこともお構い無しになおも話し続けてくる。
「キミ、1人なの?」
「可愛いね!!よかったら、お姉さんたちと遊ばない?ご飯とかどう?」
所謂逆ナンというもので、雷も奏や海輝がされているのは見たことがあったが、まさか自分が遭遇するとは思ってもみなかった。
prev*
next
back