「シスイ…」
「うん?」
「笑わない?」



シスイは返事の代わりに俺の手を握ってきた。
ああ、ヤバい。
何か今なら何でもポイポイ話せそうだ。

俺は流れに身を任せて、理由を話した。

イライラしていた理由を…




「やきもちでしょ奏」
「…うん、お恥ずかしながら…?」
「奏、あれね…」


父さんからの手紙だよ。


ああ、俺は何て……。
それにちょっと考えたらわかることだったじゃないか…



「奏?」
「見ないで」



俺はシスイの肩に寄りかかるように顔を乗っけて、見せないようにした。

駄目だ。
こんな顔見せらんない…!!


久しぶりにシスイの匂いを感じた気がする。
雷の言うとおり、彼女からはレモンの香りがした。

なんて現実逃避したところで何も変わるはずなく。



「超恥ずかしいじゃんか…俺」
「でもやきもちは嬉しいなぁ」
「…何でさ」



そう聞くと、シスイはそっと俺の頭を撫でてきた。



「愛されてるなぁって思うじゃない?」


やっぱり俺もシスイには敵わないや。

さっきまでのイライラが嘘のように消えていた。
勿論、愛してるに決まってるじゃん。



「ごめんねシスイ」
「ううん。さ、帰ろう」




そうして俺は元の調子を取り戻し、久しぶりにシスイと手を繋いで家に帰った。







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