「はい!シスイ!」
午後。
雷はたくさんの画用紙を抱えて、シスイの部屋を訪れていた。
それを差し出されたシスイは目を丸くして、雷を見つめた。
「まあ…!」
シスイは様々なポケモンが描かれている画用紙を一枚一枚、食い入るように見つめ感嘆の声を漏らした。
どれもよく描けている。
と、彼女はある一枚に目を留めた。
そこに描かれていたのは。
「雷、これ…私?」
この前のコンテストの時の一幕だった。
技を繰り出す海輝も写真を切り取ったみたいに綺麗に描かれているが、ドレスを纏った自分も自分じゃないくらいにリアルだった。
「うん!この前のコンテスト!僕とっても感動したから、思い出して描いてみたんだ」
それあげるよと雷はシスイに向かって微笑んだ。
その言葉に目を見開くシスイ。
せっかく描いたのにもらってしまってもいいのだろうか。
そう躊躇っていると雷はまた笑って、持っている画用紙ごとシスイの手を握った。
「もともとシスイにあげようと思ってたから、もらって?その方が嬉しい!」
屈託のない笑みを向けられて、シスイは気づいたらうんと頷いていた。
そして雷は“へへっ”と笑って、続けた。
「でも、やっぱり本物のシスイの方が可愛いし、綺麗だよね」
近くで見たらもーーーっと可愛い!
とぎゅっと手を握られてたじろぐシスイ。
いつの間にこんなことを言うようになったのだろうか。
きっと周りの人達があんな感じだからだ。
そんなことを考えていたら、雷が顔を覗き込んできた。
「シスイ、大丈夫?」
「…え?あ、え、ええ。大丈夫よ」
安心させるように微笑むと、雷もにかっと笑ってくれる。
シスイはそうだ、と思い出し机の引き出しを開けてあるものを出した。
そしてそれを雷に差し出す。
不思議そうにそれを見る雷。
「はい、雷にプレゼント」
「…?」
「開けてごらん?」
雷がその包みをゆっくりと丁寧に開けていくと、出てきたのは色とりどりの色鉛筆。
今雷が使っているものより色数が断然多い。
雷の目がだんだんと見開かれていく。
「!?」
「ふふ、雷の色鉛筆短くなってきたって奏から聞いたの」
雷はそれをしばし見つめた後、シスイに抱きついた。
嬉しさを隠しきれない様子できゅっと目まで瞑って。
「ありがと…!シスイ、嬉しい!すっごい嬉しい!!」
「よかった、喜んでもらえて」
シスイはそのまま雷の髪をゆっくりと撫でて、ポンポンと背中を叩いた。
そういえば、少し大きくなったかなーと考えながら。
それから雷はしばらくシスイの部屋で彼女と談笑するのだった。
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