彩りキャンパス





描くは緑の龍。
色鉛筆を走らせて、大きな翼を広げる姿を描いていく。

輪郭が描けたら次は色塗り。
緑は緑でも薄いものと濃いものを使い分け、立体感を出していく。


しばらくして出来上がったフライゴンに雷は満足気に微笑んだ。



「どう!?」
「やばい」



翼を広げ、大空を舞う姿が忠実に再現され、奏は感動を覚えた。
隠れた才能を開花させた雷は、短くなってきた色鉛筆でも構わずに画用紙に次々とポケモンの姿を描いていく。
元々絵を描くことが好きな雷であったが、近頃その絵心に彼等は驚きを隠せないでいた。


アチャモやミズゴロウなどの可愛らしいポケモンから、オノノクスやガブリアスといった描くのが難しいだろうドラゴンタイプのポケモンだってなんのその。
彼の手にかかれば、今にも画用紙から飛び出しそうなくらいに迫力のある絵が出来上がる。


現に、散らばっている画用紙にはボスゴドラとココドラが戯れている様子だったり、天空を滑空するレックウザの姿もある。



「このレックウザとか凄くない?躍動感溢れすぎ」
「一回、レックウザのおじちゃんに会ったじゃん?その姿が忘れられなくて」
「いや、ちょ、おじちゃんとか失礼すぎる」


絶対まだ若いって。


レックウザをおじちゃん呼ばわりする辺り雷もだいぶ肝が据わっていると思いながら、奏は彼が描いた絵をまじまじと見つめた。
これは…もしかしなくても…



「ねえ、雷」
「んー?」
「…これ売っていい?」



その言葉に雷の目が細まったかと思うと、手元にあったティッシュの箱を奏に向かって全力で投げつけた。
勿論、反応が遅れた奏は顔面にそれが思い切り当たるわけで。
鼻を押さえ、悶える。



「いっ…たい…」
「ばっかじゃないの」



無表情で奏を一瞥して、雷はまた色鉛筆を握った。
そろそろこれも買い換えなきゃと考えながら。








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