嬉しくて嬉しくて
「かんたん、手縫いで、マスコット…?」
書斎で見つけた本に酷く興味を引かれた。
* * *
シスイの家は最近リフォームされて、2階にひと部屋増えた。
シスイは俺の部屋だと言って、そこを宛てがってくれたのだ。
みんなと広さも変わらない俺だけの部屋。
それが嬉しくて、色々とインテリアを凝っているのはここだけの話。
シスイにも褒めてもらえるのが何より嬉しかった。
まぁ、それは置いといて。
俺はさっき見つけたそれを自室のソファに座ってパラパラと捲ってみた。
ミミロルやミズゴロウなどの可愛らしいポケモンがマスコットになって載っており、写真のページの隣には作り方も書いてある。
「かわいい…」
それはころころと丸っこく作られていて、何とも愛嬌のあるマスコットだった。
もちろん裁縫なんかやったことはないが、これなら頑張れば作れそうだと思った。
すると、あるページにドッグイヤーがあることに気づいた俺はそのページを開く。
そこには他のポケモン達と何ら変わらないデザインのアチャモの姿。
オレンジと赤のフェルトで作られているようだった。
「…アチャモ…シスイ、かな…?」
好き好んで裁縫をする人なんかうちには珀かシスイくらいだ。
それにシスイのカバンにはこのアチャモは付けられていなかったから、自分で作るつもりだったのかもしれない。
「よし…」
これにしよう。
そうと決まれば、まず俺は普段の自分からは考えられないくらいの早さでとある人のところへ向かった。
開け放たれた窓から風が入ってきて、ページがぱらぱらと捲られていたことは当然知らない。
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