少々行儀が悪いですが、致し方ありません。
ドアを足で開け、すぐさまシスイ様をベッドに寝かせました。




「うー・・・」
「怠うございますかシスイ様」
「ん…珀…水……」
「只今お持ち致します」




シスイ様は相当具合がよろしくないようです。
私はキッチンに駆け込み、水をガラスのポットに入れて急いで持って行きました。




「失礼致します」



やはり女性の部屋へ入るときは一声掛けねばいけません。
本当はそんなことを言っている場合ではないのですが、いかんせん私のプライドが許しませんでした。




「シスイ様、お水を」



私はグラスに水を注ぎ、シスイ様に渡しました。
勿論背を支え、飲みやすい体勢にします。



「ん……げほっ!」
「大丈夫ですか」



慌てず騒がず。
私はゆっくりと彼女の背を擦り、またベッドに寝かしました。


幾分か楽になったようですね。




「ご…め…珀……」
「何を仰いますか。シスイ様の看病は私の…いえ、私だけの仕事です」



そう。
私の生きがいは誰にも邪魔はさせません。
まざまざと他の者に盗られてたまりますか。


シスイ様はそれを聞くと、薄く微笑んで私の頬に手を当てました。



「珀…やきもち…?」
「っ…そんな…」



別に雷がいつもシスイ様に抱きついてるのを見て、羨ましいなんて思っておりませんよ。


そんな言葉が寸前まで出掛かってしまいましたが、ぐっと抑えてその手に自分の手を重ねた。



「シスイ様・・」
「久しぶりに見た…珀の・・泣きそうな顔…」
「貴女が風邪を引いただけでも私は胸が張り裂けそうになるのです。
どうか…貴女が早く治って、花のような笑顔を見せてくださいますように」



私はくっと屈んで、シスイ様の額に口付けを落としました。

祈りが届きますように。


シスイ様は“ありがとう…”と小さく頷くと、すぐに夢の世界へ旅立たれてしまいました。



それから私は掛け布団を掛け直してから、そっと部屋を出ました。









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