「お願い、獅闇」
『・・・理由がわかりやすいのは気のせいか?』
一度“バトルで”試してみたかった。
彼のこの“武器”がどれだけの威力を発揮するのかを。
「じゃあまずはシャドーボール」
獅闇から黒い塊が繰り出される。
それは一目散に相手のピッピに向かっていくが。
「避けて!!」
もとよりピッピの素早さとは思えないくらいさっと避ける。
それから間を空けずに女の子が指示を出した。
恐れていたあの技の・・
「ピッピ!メロメロ攻撃!!」
「(きた…)」
相手のピッピは獅闇にウインクを送る。
シスイは固唾を呑んでそれを見守った。
『お…っと』
獅闇は飛んできたハートをひょいと避け、いつの間にかピッピの隣にいた。
「何ですって?!」
その状況に目を丸くする相手。
獅闇はそのままくっと首を屈め、ピッピの耳元で囁く。
『俺はあいつ一筋なんでね』
ああ。
あの女の子は何て勿体無いのだろう。
あんな良い声が聞こえないなんて。
蜂蜜のように甘い甘い声がシスイの耳朶にはしっかり響いていた。
その証拠にピッピは目をハートにして倒れてしまった。
「ど、どういうこと・・?!」
女の子は訳がわからないという風な顔で、倒れたピッピをボールに戻した。
その理由を説明せずに完全勝利したシスイはファイトマネーもちゃんと貰って、彼女と別れた。
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