Voice



「・・・・・うん」
「何が“うん”だ」


やっぱり獅闇は色んな意味で無敵なのかもしれない。



* * *


遡ること数時間前。
散歩をしようと、121番道路まで行ってみた時のことだった。



「ちょっとそこのあなた!!」



少々ハスキーボイスな女の子が、シスイを指差し呼び止めた。


身長はシスイより断然低いくせにちょっと偉そうな態度が癪に障るが、シスイは“何か?”と努めて冷静に対応する。



「私と勝負よ!!」



そうではなかろうかと予想はしていたが、目と目が合ったらポケモン勝負。
それがトレーナーとしての礼儀なのは常識なので、シスイは渋々了承した。


「使用ポケモンは2体のシングルバトル!
どちらかのポケモン全員が戦闘不能になった時点で試合終了よ!よろしくて?」
「…ええ」



随分と高飛車なのが気に食わなかったのか。
シスイがモンスターボールを掴む前に開閉音が響いた。

姿を現したのは黄色い彼。



「雷?」
『あの女、すっごいムカつく!!ギッタンギッタンのボロッボロにしてやる!!』
「…よろしく、雷」


やる気満々の雷はずんと一歩前に出た。
相手が繰り出したポケモンは・・



「お行き!!マリルリ!!」



みずうさぎポケモンのマリルリ。
長い耳をゆさゆささせながら一歩出る。

相性的には雷の方が断然有利。
だが、油断は大敵。



「先手必勝!!マリルリ!水鉄砲!!」



マリルリの口からものすごい勢いで繰り出される水鉄砲。


「雷、避けて。それからスパーク」
『ラジャー!!』



もともとすばやさの高い雷。
電気を纏った彼はものすごいスピードでマリルリにとっしんする。

効果は抜群。
マリルリは目を回して、倒れた。




「マリルリ・・!!次はこの子よ!!」



と彼女が繰り出したポケモンはようせいポケモンのピッピ。
まずこの辺りじゃ滅多に見掛けない珍しいポケモンだった。



「珍しい・・」
「私、カントーから来たのよ!どう?可愛いでしょ?」



確かに可愛いが、それを今自慢してどうするのか。
シスイは少々呆れつつも、雷を引っ込めた。


『え・・ちょ、待ってシスイ!僕、まだできるよ!ボロボロにしてない!』
「ごめんね、メロメロボディだったら困るから」



直接攻撃をした時、相手を30%の確率でメロメロ状態にするこの特性。
案外厄介な上に、雷は基本直接攻撃を得意としているのでメロメロになったら困るのだ。
雷が、メロメロにかかるとはあまり思えないが念のために。


だから、それ対策には勿論あの子。








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