今日は本当に不運な日だ。

転ぶ、切る、落ちてくる。
そして水浸しになる。


次は何がくるのだろう。
そう身構えていた時。



「ちょ、そっち駄目だってー!!」


やはりというか…何というか…




べとっと効果音が付きそうな感じで私のお腹に何かが張り付いた。


オレンジ色の体。



「アチャモ?」
『この人、いい匂いがするー!レモンレモンー!!』



私のお腹に張り付いて、顔をすりすりさせているアチャモ。
どこから来たのだろう。



「はぁ…ごめん!シスイ!」
「そ、奏」
「その子、迷子みたいでさー。俺が引き取ったんだけど、もう随分やんちゃで…」




奏は私のお腹からベリッとアチャモを剥がすと、軽々持ち上げた。



『やー!やー!』
「やーじゃないの。ほら、お前のご主人は?」
『この人ー!』
「嘘をつくんじゃない」



ペシッと軽く頭を叩く奏。
それでも奏の腕の中のアチャモはバサバサと暴れている。



『おれ、迷子じゃないもーん!』
「どう考えたって迷子じゃんか」



ほら、探しに行くよー

奏は彼を抱えたまま、歩き出したので、私もついて行くことにした。




「アチャモー!探したんだぞ!!」
『うげ。見つかった…』



探すこと数分。
奏がアチャモを見つけたというポケモンセンターに戻ってみると、キョロキョロと何かを探すように辺りを見回している少年がいた。
もしやと思い私と奏が彼に話しかけてみたところ。



「ありがとうございました!!こいつ、すぐに脱走する癖があって」



やはり彼のアチャモだったようで、彼等はすぐにセンターを出て行った。


一件落着。
ふぅと息を吐いてロビーのベンチに腰掛けた。



「何か疲れてんね、シスイ」



はい、とミックスオレの缶を渡しながら、奏は私の隣に座った。
そりゃあ、こんなに不運なことが続いていたら疲れもする。


その事を奏に話すと彼は“ははっ!”と笑った。




「ま、そんな日もあるよ」


何事もポジティブに。ね!


奏はそう言って、私の頭を撫でてからパチリとウインクをした。



ああ、雷のウインクは彼から…


私はそんな奏の言葉に頷き、ミックスオレを一口、飲んだ。





ひんやりした感覚が妙に心地よかった。








(終)


書き置きしていたものに加筆修正したものでした。

シスイちゃんは愛されていますね。笑





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