その日の午後。




「え…?」



バサバサと音を立て、本が落ちてくる。

ヤバい…!

そう思い、咄嗟に目を閉じた。



が。


いつまでたってもくるはずの衝撃が来ない。
恐る恐る目を開けてみると、器用にそれをキャッチした雷の姿。




「シスイ、大丈夫?」



大きな目をパチパチさせて、彼は私を覗き込んでいた。
私は頷くと、雷は心底安心したように笑った。

にしても、かなりの量の本が落ちてきたような。



「あ、雷こそ大丈夫だった?」
「平気!!それにしても、誰だろうね。こんな不安定に置いた人」



ちゃんとこうやって綺麗に立てておかなきゃ。
本棚なんだから。


雷はブツブツと文句を言いながら、キャッチした本を綺麗に本棚に立てかけている。
私もそれを手伝った。


「ありがとう!シスイ!」
「それはこっちの台詞。助けてくれてありがとう雷」
「どういたしまして!!シスイが怪我しちゃったら、僕悲しいし!」



雷はウインクが妙に上手くなっていた。
そして眩しい。




* * *





それから1時間後。



「……」
「す、すみません…シスイ…」
「す、まん…」



私は今、水浸しだ。
椿の水遣りをやっていた海輝と牙。

珍しい組み合わせだと思って、近付いたのが運の尽きだった。

何故か…何故か!暴走したホースの餌食。

咄嗟に避けたものの、髪の毛と上に羽織っていたカーディガンはびしょびしょだ。


何だろう。
今日はツイてなさ過ぎる。




「い、今タオルを持ってくる」




牙はさっと走り出して、家の中に入っていった。
海輝も眉根を寄せて、私の髪を撫でている。



「ごめんなさい、シスイ」
「いいよ、気にしないで。悪いのはそのホース」



意味もなく私はホースを睨みつける。

すると突然海輝が私の腕を引っ張り、抱き寄せてきた。



「!ちょ、海輝?」
「貴女が風邪をひいたら大変です。少しでも温まれるようにと…」




今気付いた。
海輝は凄くいい匂いがする。

なんていうか…こう…石鹸というか…


今の状況が結構恥ずかしくて、そんな考え事をしていたら、上からクスクスという笑い声。
少し見上げてみると、海輝が綺麗に笑っていた。




「か、海輝…?」
「可愛いです」
「…は?」



最近。
ウチの子たちはどうしたのだろう。

ナチュラルに大胆になった気がする。
珀とか獅闇とか…そして海輝とか。




「それに水浸しのシスイも美しいですね」



こんな人に雷のお守りを任せていいのだろうか。
いつか雷もこんな風に大胆に発言するような人になってしまうのだろうか。


そう考えたら、何だか寂しくなってきてタオルを持ってきてくれた牙に私は泣きついた。
牙は相当焦っていたけれど。





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