しばらくシスイの話を聞いていた珀はスッと立ち上がり、雷。と呼んだ。
「なぁに?珀」
「さっきの男はどんな格好をしていましたか?」
「さっきの男?ああ、ナンパ野郎?えーっとね・・・」
雷はふっと考える素振りをして、ある男を指差した。
緑の髪が揺れる。
「え、俺?」
「奏くらいの身長で、奏みたいな頭して、奏みたいな雰囲気」
その言葉に珀はわかりましたと今度は獅闇を呼んだ。
「獅闇」
獅闇はその声に顔を上げ、珀を見る。
「少し、付き合って頂けますか」
「どうせ拒否権ないんだろ」
獅闇はガタッとイスから立ち上がると、珀についていった。
「え、ち、ちょっと待って、雷酷くない?」
「だって奏みたいだったんだもん」
「むしろ、お前だったんじゃないのか」
牙は珍しくクツクツと笑って、いつものロッキングチェアに座って本を開く。
奏だったら僕もっと怒ってたなーと雷もソファに座って足をぶらぶらさせた。
「ていうか、珀もそんなので犯人わかんのかよ…」
という奏の呟きは誰にも聞かれず。
そしてその光景をシスイは見守りつつ。
急に襲ってきた睡魔に勝てず、そのまま寝てしまったのだった。
* * *
「あ。シスイ、寝ちゃった」
雷はソファですやすやと眠るシスイの顔をそっと覗き込んだ。
それに倣って隣にいた奏も彼女の寝顔を見やる。
気持ちよさそうに眠る姿に思わず笑みが零れた。
「ホントだ・・疲れたんだね」
「それにしても、シスイをナンパするとはそいつも命知らずだな」
牙はシスイの頬をそっと撫で、顔に掛かった前髪をそっと払ってやった。
顔色はとても良く、頬は温かい。
「本当だよねぇ・・ま、珀が行っちゃった時点でそいつ半殺しだろうね」
「えー・・だったら僕が半殺しにしておくべきだったかなぁ・・・」
雷のその言葉にギョッとする奏。
苦笑して、雷を見た。
「雷、お願いだからシスイの前ではそういう発言控えてね」
「わかってるよ!僕、シスイの前では癒し系でいたいし」
「(海輝・・早く帰ってきて・・!!)」
あは、ははは・・・
奏は苦笑するしかなかった。
そしてまた一つ。
ミナモシティに断末魔が響き渡ったのだった。
<終>
雷、真っ黒ですね。
主人公のこととなると豹変する彼。
そんな彼もぜひ好きになってくれると嬉しいです^^
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