翌日。


「では、博士・・よろしくお願いします・・」


研究所の前で深々と頭を下げるシスイ。

しばらくウツギ博士にタマゴを預けることにした。
彼女自身も決して研究をやめたわけではないが、ここはタマゴ研究の第一人者の知恵に頼ろうということになったのだ。



「うん、任せて。そうだなぁ・・1週間!1週間預かるよ。
それで何か反応があれば、研究所で一緒に住んでるムクホークに知らせに行かせるよ」



彼はウチで一番速くてね。
ウツギ博士は隣でポンと自分の胸を羽で叩き、得意気にしてるムクホークを見やり、体を撫でた。



「シンオウのポケモンじゃないですか!」
「うん、昔知り合いから譲り受けたんだ。
なかなか頭のいい子でね。
今じゃ立派な僕の助手でもあるんだよ」



珍しいシンオウのポケモンにシスイは目を輝かせ、ムクホークを再度見た。
大きな羽に、特徴のある頭、きりっとした瞳が強さを感じさせた。
随分と立派なムクホークだとシスイは瞠目した。



するとムクホークは紳士のようにお辞儀をすると、二カッと笑った。



『俺に任しとけよ!!びゅーんと行ってやるからな!!』
「あ、はい。よろしくお願いします」


“俺の言葉わかんのか!すげーな嬢ちゃん!”
何とも元気のいいムクホーク。
シスイはそんなムクホークの頭を撫でると、奏を出した。



「奏君かい?」
『おおー!ウツギ博士ー!!』



言葉は通じないものの、奏は尻尾でウツギ博士をパシパシと叩いた。



「こら、奏!」
『いや、だって久しぶりなんだもんー!ひゃー!相変わらず偏った食生活送ってそう!』



奏は豪快に笑いながら、未だにウツギ博士の背中を叩いている。
博士はその衝撃に苦笑しながらも、されるがままだ。


そういえば確かに彼も研究に夢中になると食べないことも多いらしいと聞いたことがあったが。
シスイはふと博士を見て改めて思った。
目元にはうっすら隈があるし、細い腕は前よりもまた少し細くなった気がする。


少し心配になりながらも、彼女は奏を止めた。



「奏君何て?」
「あ、いえ・・久しぶりだって」
「そうだね、みんなの記憶は進化前だからなあ・・立派なフライゴンだ」



ウツギ博士は彼の体を優しい手つきで撫でると、ニコリと笑った。
奏に至っては“いやぁ照れるなぁ!”と飄々と笑っている。

シスイは奏に飛び乗ると、またお辞儀をした。



「では、お任せします博士」
「うん、1週間後。いい成果を送れるように僕も全力を尽くすよ」
「はい、お手数お掛けします。ありがとうございました」



ウツギ博士は返事の代わりにまた笑って、手を振った。
それを合図に歌声のような羽音と共に奏が急上昇した。




返事は1週間後。
その間はあまり部屋に篭らなくてよさそうだと、シスイはふっと息を吐いた。











〜続く〜



ウツギ博士の口調がいまいちよく掴めなかったです…すみません。



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