“はじまりを つげる かぜがふく まち”


そう書かれた看板の前にバサッと降り立つ影。
この辺りでは珍しいであろう一体のボーマンダ。


途中、休憩したときに奏から交代し、牙がここまで飛んだ。
シスイはさっと牙から降り、うーんと背伸びをする。



『疲れたか』
「ううん、大丈夫。牙も奏もありがとう。ゆっくり休んでね」



シスイは奏のボールと牙の綺麗な青の体を撫でた。
それに返事するように奏のボールがカタリと揺れ、
牙は目を細め、長い尾でそっとシスイを包むように労う。




「久しぶりだね、シスイちゃん」


すると、ふと声を掛けられ後ろを振り返る。
メガネをかけ、白衣を身に纏うまだ若い博士。
ポケモン研究家であるウツギ博士だ。



「ウツギ博士!」



ウツギ博士はシスイに近寄り、手を差し出した。
シスイはそれを取り、握手をする。


少し痩せたように見えたウツギ博士はニコリと笑い、彼女の後ろに控えていた牙を見る。



「ボーマンダ・・あぁ、牙君だね。しばらく見ない間に随分と立派になったようだ」



ウツギ博士はそう言うと、にこりと微笑んだ。
牙は挨拶するようにそっと頭を垂れた。



「お久しぶりです、すみません・・突然訪問してしまって」
「いいんだよ、詳しい話は研究所で聞かせてもらおうか」
「はい、お願いします」



すると何かに気づいたようにウツギ博士は言った。



「ああ!おや、シスイちゃん・・新入りかい?」



そして彼はボールホルダーにあった最後のボールを指差した。
彼女はああ、とボールホルダーにあった獅闇のボールを取り出し、投げる。




「目聡いですね博士」
「まぁね。よかったら紹介してくれる?」



棚引く黒毛。
獅闇は軽く伸びをして、シスイを見た。



『シスイ、』
「うん、紹介しようと思って。博士、新入りでグラエナの獅闇です」
「獅闇君ね。わかった、初めまして獅闇君。ポケモン研究家のウツギだよ」



獅闇は返事の代わりにすっと頭を下げた。



「やっぱりシスイちゃんの所の子達は礼儀正しいね」



ポンポンと牙と獅闇の体を優しく叩き、歩き出すウツギ博士。
シスイは牙に“お疲れ様”と一声掛け、獅闇と共にボールに戻し彼の後についていった。








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