ワカバタウンへ



「よし・・皆の衆!!準備は?」


シスイがお礼を言い、珀から荷物を受け取る。
ジョウトまでの長い道のり。
奏に最初乗せて行ってもらって、
途中休憩を挟み、牙に乗り換えるつもりでいる。



珀は返事の代わりに静かに頷き、原型であるアブソルに戻る。




『準備オッケー!!』



雷は尻尾をフリフリ、シスイに抱きつく。
雷の傍らに控えていた海輝と牙もそれぞれ頷いた。



『問題ありませんシスイ。いい結果が得られるよう願います』
『シスイ、あまり無理をするなよ』



獅闇も黙って一つ頭を振り、各々が労うように彼女の腕に擦り寄った。



『シスイ様、何かあれば何なりとお申し付けくださいね』



皆がボールへ戻った後、
最後まで残っていた珀も深々と頭を垂れ、さっとボールへ戻っていった。


シスイは奏のボールも含め6個のボールを腰のホルダーにセットし、“ありがとう”と呟く。
そしていつものように羽をパタパタさせている奏に近寄った。


いつも以上に無理をさせてしまうかもしれない。
そう思い、彼の大きな体躯をゆっくりと撫でた。


それを感じ取ったのか、奏はシスイに顔を向け、微笑んだ。



『不安?』


あ、俺なら平気だからね?


その言葉にシスイは少しだけ眉を下げた。
情けない。
自分が一番しっかりしなければいけないというのに、何だか言いようのない不安が押し寄せてくる。



奏はシスイの顔をしばらく見つめた後、器用に羽でシスイの頭を撫でた。
シスイも瞳をそっと閉じて、奏の綺麗な緑色の体にピタリと額をつけた。



「不安がないって言ったら嘘になるけど、でもあなたたちがいてくれるから・・大丈夫」
『そうだよ、俺たちがついてる。だからシスイはいつものように胸を張って』



優しい奏の声が耳朶に直接響いた。
それだけで何だか安心できるような。


そう思ったら、何だか体が軽くなった気がしてシスイは慣れたように奏に飛び乗った。



奏はそれを見届けると、勢いよく羽を動かし飛び上がる。


すると広がる歌声のような羽音。
それが暫くミナモの街に木霊していた。







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