「たぁああ!!!」
真新しいボールがすごいスピードで飛んだ。
だが、それもいとも簡単にキャッチされる。
「っ!雷、力が付きましたね。前よりボールが重いです」
「!ホント?!わー!やったー!」
そして次は魔のターン。
海輝の超剛速球が繰り出される。
雷はふっと体制を低くし、ボールを受け止める体勢を作る。
そして。
物凄い音がした。
「!あ、雷!!!」
土煙さえ起こった。
それが晴れた瞬間、壁ギリギリにいる雷が現れた。
海輝はさっと顔を青くし、一目散に彼に駆け寄った。
「雷!雷!!大丈夫ですか!?」
俯いて動かない彼に海輝は顔を覗き込もうとする。
が、それより先に雷がバッと顔を上げ、にこーっと笑った。
「やったよ・・海輝・・!!」
「・・え?」
「ほらっ!!」
と雷は自分の手にあるボールを海輝に見せた。
それを見て、海輝は目をこれでもかというくらいに見開いた。
「やったああああ!!遂に海輝のボールキャッチしたよ奏ーーー!!!」
ぐわりと立ち上がって、雷はテラスからリビングに入っていった。
暫く呆然としていた海輝もふと我に返り、至極嬉しそうに微笑んだ。
「本当に・・あの子は・・」
嬉しさを抑えきれないまま、彼も雷の後に続いた。
* * *
あれから。
牙もやっと帰ってきて、珀たちは帰宅した。
そして珀は真っ先にシスイの部屋を訪れる。
「シスイ様?」
いつものようにノックをして、一声掛ける。
だが、返事がない。
「失礼します」
珀はそっとドアを開け、中に入る。
綺麗に片付いている部屋だが、机だけは資料が山積みになって、彼女の姿が見当たらない。
珀は机に近づいた。
すると机に突っ伏して寝ているシスイの姿が目に入った。
「!シスイ様・・」
珀は苦笑して、ベッドに放り投げてあったカーディガンを掴み、そっと彼女の背中に掛けてやる。
「お疲れ様で御座います」
珀はそっと呟くと、落ちている資料を拾い、束ね、机に置く。
開いている窓からは心地よい風が入ってきていたが、風邪を引くといけないと静かに閉める。
未だに机ですやすやと寝息を立てている彼女を再度見て、そっとその柔らかな頬を撫でた。
「これでは資料は渡せませんね」
おやすみなさいませ。
そう小さく声を掛け、珀は静かに部屋を出た。
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