「ずるい・・」
「こうでもしなきゃ、永遠と鬼ごっこは続いていましたからね」



バスタオルを離すと、海輝は雷に服を渡す。
それに袖を通しながら、雷は未だにぶすっとして海輝を見つめる。


下ろされた髪はいつもより雰囲気の違う彼を起こさせる。
無駄のない体つき。
一体どれだけ筋トレをすればこんなに筋肉がつくのだろうか。
雷はそんなことを何とはなしに考えていた。



「雷?」



海輝の声にハッと我に返った雷は彼の服を引っつかむと、半ば押し付けるように渡した。
海輝はそれをキョトンとした顔で見たあと、“ありがとうございます”と受け取った。
そして雷は声高らかに宣言する。



「僕だっていつか腹筋つけてやるんだからね!」
「あー・・・やめといたほうがいいんじゃない?雷」



と傍でお茶を飲んでいた奏が首を横に振ってそれを否定した。
その言葉にむっとする雷。
怒ったように奏に近寄って顔を覗き込んだ。



「むー!!何でさ奏!」
「そんな無理に背伸びする必要ないと思うんだよなあ俺」



奏はポイっとミニシュークリームを一個口に運んだ。



「え・・?」
「・・・・・」



獅闇は何だか驚いたように奏を見た。
雷は首を傾げた。



「まあ…要はそのままの雷でいいってこと!!」


それに俺ならそんなに雷がむっきむきになったら泣くね、絶対。



奏はそう言い、はいとシュークリームを雷の口元に持っていった。
雷はそれをぱくっと口に入れると、もぐもぐと咀嚼する。



「・・・おいしい」
「でっしょー。それ俺のオススメ」



奏はにこりと笑った。
何だかうまく丸め込まれた気もしないが。


ま、いっかと雷はシュークリームに手を伸ばした。
うん、やっぱりおいしい。



海輝が髪を結いながらニコリと笑い、
獅闇もそんな様子に口元を綻ばせたのだった。







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