「ね?シスイがいれば、一発なんだよ雷」



奏は獅闇にそっと言った。
シスイの力にも改めて驚いたし、何よりこの家の温かさに自分の心までも温かくなるのを獅闇は感じていた。
獅闇はふっと小さく笑うと、シスイにもカプチーノを入れてやろうとまたキッチンに戻っていった。


そんな雷とシスイの様子を見ていた珀はすっと彼女に近寄り伝えた。



「明日にでも資料が届くそうです」
「あぁ、ネンリくん?」
「はい」
「ごめん、ありがとう珀。私が電話できればよかったんだけれど・・・」
「とんでも御座いません。これくらいの事、この私で十分です」



シスイはありがとうと再び礼を言い、そのまま自分の肩口で眠ってしまった雷をソファに寝かせ、ブランケットを掛けた。




「戻るわ。夕飯の時になったら呼んでくれる?今日は皆と一緒に食べるから」
「かしこまりました。来週中には出発できそうですか」
「何とかね」
「そうですか。お体だけは壊しませぬよう・・体調が悪くなったら直ぐにお申し付けください」




珀の言葉にひらりと手を振って応え、シスイはまた階段を上がり、部屋へ戻っていった。





「獅闇」
「ん?」



丁度キッチンにいた獅闇は珀に呼ばれ、顔を上げた。
珀は壁に掛けてあったエプロンを身につけながら言う。



「夕飯の支度、手伝って頂けませんか?」
「いいけど、何で俺?」
「奏にはこれから海輝を迎えに行ってもらいますから」



そして奏に顔を向けた。
すると奏はあからさまに抗議の声をあげる。


が、それを珀が聞き逃すわけがなく。



「えー・・」
「奏だけ夕飯抜きにしましょうか」
「えぇ?!行く!行くからそれだけはああ!!」



珀は眉根を寄せ、“今日は奏の大好きなロールキャベツだったのですが・・残念です”と呟いた。
すると奏は一目散に二階へ行き、いつも着ているベストを持ってきて、行ってきます!!と凄い勢いで家を出ていった。



「恐るべし・・」
「さぁ獅闇。キャベツを茹でましょう」
「お、おう」



すると奏が戻ってきて、牙の腕をパシっと掴んだ。



「・・・!」
「牙も行こう!!」
「何故・・」
「いいから早く!!」


と半ば無理やり牙を引っ張って再び家を出て行った。



「・・・・賑やかだな」
「ええ。良いことです」
「・・そうだな」



そうして二人は着々と夕飯の支度を進めていくのだった。






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