すると。
獅闇が雷に目線をやったときだ。
「あれ・・」
「ん?どしたの獅闇」
「いや、雷の顔が・・何か・・」
カプチーノのカップを両手で持ち、ゆっくりと飲んでいた雷だったが、心なしかぶすっと不貞腐れているような顔をしている。
「ああ・・」
すると奏は獅闇の隣に移動し、コソッと教えてくれた。
「海輝がいないから」
「…え?」
「進化して大人になったとはいえ、ずーっと雷は海輝を自分のお兄さんみたいなお父さんみたいな、そんな風に思ってるんだ。
だから、無意識に海輝が他の子に盗られたーって思ってるんだよ」
「な、るほど・・」
雷と海輝。
本当に傍から見ても親子のような兄弟のようなそんな関係。
それに雷自身も海輝が大好きで、大きくなった今でも他の子達と遊んでいる海輝を見ると、いつも拗ねて一人で帰ってくる事だって少なくない。
「大丈夫。海輝が帰ってくれば直るし、それに・・・」
そう言って奏は指を指す。
獅闇はその方に目をやった。
「い、いつの間に・・!」
いつの間にか部屋から出ていたシスイが雷の隣に座って頭を撫でていた。
「!!・・シスイ・・?」
「おはよう、雷」
「お、おはよう・・って・・もう昼だよね・・」
シスイはゆっくり撫で続ける。
そして雷が持っているカップに目をやった。
「ふふ・・そうだった。あら可愛いミミロルね。獅闇に作ってもらったの?」
「う、ん。作ってって僕がお願いしたんだ・・」
シスイは寂しそうに笑う雷の顔を覗き込んだ。
雷の目からは涙が零れ落ちてきそうなくらいに潤んでいる。
シスイは雷の目元をすっと親指で撫でた。
「そっか。…雷、海輝がいないから寂しい?」
「っ!」
すると雷はカップをテーブルに置き、シスイに抱きついた。
シスイはそれを慣れた風に受け止め、背中をポンポンと叩く。
「大丈夫、大丈夫」
「寂しくないもん・・」
「雷。海輝、最近言ってたよ?」
「・・・何て」
雷はシスイの肩口に顔を埋めた。
「“最近、雷が遊んでと言わなくなったんです。俺、嫌われちゃったのでしょうか”って」
「・・・・嫌いじゃないもん。僕が昔からずっと海輝に遊んで遊んでってばっか言ってたから、迷惑なことはやめようって・・思って・・・」
雷はそのまま嫌な気持ちをぬぐい去るように、シスイの肩にぐりぐりと顔を押し付けた。
シスイはそれを嫌な素振り一つ見せずに、ずっと雷の柔らかな金髪を梳いた。
「迷惑なんかじゃないわ。海輝は雷と遊ぶのが凄い楽しいのよ。だから、これからも遊んであげてね?」
「うん・・・」
シスイはキッチンにいる奏と獅闇に密かにウインクを送った。
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