やきもち?



オダマキ研究所の電話が鳴り響いた。



「もしもし?こちらオダマキ研究所ですが?」



出たのは勿論サーナイトのネンリ。
共同論文も出し終え、また別の研究に没頭している矢先だった。



【こんにちは、お久しぶりですねネンリ君】
「その声・・珀さんですか。どーも、お久しぶりです」
【おや。よく声だけで私だと気がつきましたね】
「何度声を聞いてると思ってるんですか」



そう笑ってネンリは手に持っている資料を読み始める。
相変わらずチトセは彼女との逢瀬を重ねているそうで。
オダマキ博士もフィールドワークに夢中らしい。
というわけで、研究所の留守番役はまたしてもネンリだと言うが・・



【では、今はネンリ君お一人ですか?】
「いや、ライラがいますよ」
【ああ、この前のルクシオですか】
「ええ。俺の研究を手伝ってくれているんです」



ライラ。
この前、シスイが心を開かせたポケモン。
研究所に入った頃は警戒心むき出しだったが、今では仲間達とも打ち解け、ネンリ達の研究を手伝っているらしい。


ネンリはその彼が今いるであろう部屋に視線を向けた。




「それで?何か御用ですか?用もなく電話するような人じゃないでしょう貴方は」
【よくお分かりで。ええ、少々シスイ様からの言伝を・・】
「シスイさんから?何故、彼女が直接電話してこないんですか」
【今、シスイ様は部屋に篭りっきりでタマゴの研究をなさっておりまして。
それに集中したいからと私に貴方へ言伝を頼まれました】




彼女が請け負った任務内容はここ、オダマキ研究所にも伝わっていた。
いつかお世話になると思うから。
そう考えたシスイが予めオダマキに言っておいたのだ。



「あぁ、なるほど。聞きましたよ、ジョウトのウツギ博士にヘルプするって。で、俺に言伝って?」
【はい、今週中にポケモンのタマゴの資料をいくつかこちらに送って欲しいそうで】
「ああ、わかりました。これといって特別なものはないですけどね、それでも?」



ネンリは立ち上がり、資料が置いてある棚に向かった。
子機を肩で挟み、棚からいくつかのファイルを取り出す。
そしてそれを近間のテーブルに置くと、手近にあった紙袋にそれを詰めた。



【ええ、構いません】
「なら、目星い物をいくつかピックアップして、明日にでもウチにいるペリッパーに持たせますから」
【了解しました。ありがとうございます。お手数お掛けします】




どう致しましてとネンリは電話を切った。

そして子機を専用の充電器に挿すと同時に奥の研究室のドアが開いた。
出てきたのは藍色の髪を持つ男の子。


「ネンリ?誰からだ?」


ライラは手に持っていた資料の枚数を数えながら問うた。
ネンリはちらと彼を見て、また自分の資料に目を通す。



「シスイさんとこの完璧執事さん」
「シスイ?!」
「そこに反応しない」



ライラがバッとネンリの顔を見た。


「シスイ、来んのか?!」
「来ないよ」
「んだよ、つまんねー・・」



あれからライラもすっかりシスイに懐いて、彼女はもう来ないのかとややしばらくネンリ達に詰め寄っていたのはネンリの記憶にも新しい。
ライラはがっくりと肩を落とした。



「悪かったね、俺がつまんなくて」
「誰もんなこと言ってねーだろ」



ほい、出来上がったシリョー。



とライラは持っていた資料をネンリの机に置いた。
ネンリは置かれたそれを見ると、瞠目した。



「早いな、ありがとう」
「おー・・コーヒー淹れてくるわ」
「あ、俺も」
「うぃー・・」
「何だその返事・・」



キッチンに下がっていくライラの背中を見ながら苦笑したネンリは、彼が持ってきてくれた資料に目を通し始めるのだった。






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