瞬間。
ドクンと何かが揺れた。
「!」
海輝は咄嗟に自分の腕に抱えられているものに目を向けた。
腕に抱かれていたタマゴから脈打つ音が彼の心に伝わったのだ。
「し、シスイ!!!」
「うん?」
未だ泣き続ける雷を撫でながら、首だけを海輝に向ける。
「タマゴが・・・反応しました」
「・・・・え?」
「たった今。俺の腕の中で脈打つ感覚が伝わってきました」
「・・・そう。ようやく、出てこようという気になってきたのかしら。牙の作戦が成功したようね」
と牙に視線を向けると珍しくニヤリと笑った彼の姿。
「そうみたいだな」
あのバトルが行われる前。
【え?タマゴも一緒に観戦させたらどうかって?】
【ああ、少しでも外の世界を見せたほうがいいんだろう?
だったら、俺達が今いる世界を感じさせてやればいい】
【・・なるほど・・】
という牙の提案のもと、タマゴを海輝に抱かせてこのバトルを観戦させていた。
その結果。
「脈アリ・・ってか」
ボソリと獅闇が呟いた。
「んじゃあそれもウツギ博士に報告すればいいってことでしょ。
たんのしみだなあ・・・どんな子が生まれてくるんだろうね」
「奏。まだ気が早いですよ」
「そういう海輝こそ珍しくウズウズしているのでは?」
そんなやり取りを見つつ、シスイは立ち上がった。
「さ、雷。もう大丈夫ね?」
そう彼に問えば、一瞬で彼も人の姿に戻り大きく頷いた。
シスイは考える仕草をする。
そして何かを決心したように顔を上げた。
「シスイ様」
「ジョウトには来週行くことにする。それまで何か少しでもわからないか、また調べてみるよ」
シスイは海輝の腕からそっとタマゴを抜き取り、空に掲げる。
タマゴは陽光に照らされ、キラキラと反射している。
「大丈夫、大丈夫」
シスイはそう呟いた。
すると。
雷がシスイの隣に移動して、掲げられているタマゴを眩しそうに見た。
「僕は君に早く会いたいよ!」
そして持っている手に自分の手を重ねた。
暖かな命の灯が伝わってくる。
「雷・・・そうだね、私も会いたいなあ・・・」
“だから、怯えていないで出ておいで”
そうしてシスイはタマゴに頬を寄せた。
フィールドは心地いい陽の光で満ち溢れていた。
〜続く〜
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