アイアンテール



「ふふ・・」
「はは・・」



向かい合うは漆黒と緑。


「ふふふ・・・」
「ははは・・・」



木霊するお互いの微かな笑い声。
フィールドを吹き抜けた風。


瞬間。



「先手必勝!!雷!電光石火!!!」
『な・・なんでこうなるわけえええ?!!』



と、言いつつ物凄い速さで突進していく雷。



「珀!!影分身!!」
『御意』



何体もの珀が雷の視界を混乱させる。



「・・・こういうのってアリなのか」
「ポケモンがポケモンに指示を出す姿はいつ見ても滑稽だな」
「でも、こういった光景が我が家では普通ですからね」



獅闇、牙、海輝が目の前で繰り広げられるバトルを傍観しながら、会話する。


“雷、アイアンテール、見せて欲しいな”


そんなシスイの一言から始まったこのバトル。
珀と対峙するのは勿論雷だが、雷の指示を出しているのが奏という何とも複雑な光景。


そうか。
こうやって奏は牙に指示を出して、コソコソと金稼ぎをしていたんだな。

シスイはそう呟き、雷の出方を伺った。




「混乱するな雷!!お前の”かみなり”を食らわせてやれ!!」
『どうせなら海輝がよかった・・・』



と、言いつつ物凄い威力の”かみなり”が珀の分身全てに降り注ぐ。
膨大なエネルギーが一気に爆発するような音と小さなうめき声。

ダイゴお墨付きの”かみなり”は多大な威力だ。



「やるわね雷・・・・大丈夫?珀」
『っ問題ありません。・・ご指示を』
「高速移動!!そしてかまいたち!!」



視界から珀の姿が消えた。



奏と雷が息を呑む。


珀は攻撃する瞬間を見せない。
高速移動をしながら風の刃を形作る。


刹那。


姿なき所から突如刃が雷目掛けて放たれた。



「雷!!!」
『わかってる!!!』



雷はそれをギリギリでジャンプして避ける。
奏は待ってましたとばかりに口角を上げた。



「雷・・・アイアンテール!!!」
『ラジャー!!』



バチバチと電気を纏う尻尾。
本来なら電気を纏わないこの技だが、
雷はそれを独自に開発させた。



「おお・・・」
「雷は俺達のスパルタ特訓にもめげずに練習し続けていたからな」
「ふふ、雷オリジナルのアイアンテールですね」



傍観者組は感心しながら、それを見守る。



【雷!!もうギブアップなわけないよね?】
【だらしないぞ雷!!もう一度だ!!!】


雷の頭の中でフラッシュバックされるあの日々。


【まだ・・まだまだあああああ!!】


必死だった雷。
何よりも大切なあの人のために・・・


奏には今の彼の姿があの時と重なった。


振り下ろされるそれ。
いつも以上にバチバチと放電する雷の体。






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