昼頃になってようやくシスイが部屋から出てきた。
眼鏡をかけたままのシスイは“ふわぁぁ”と欠伸をしながら、リビングに入ってくる。
「あ、おはよう。シスイ」
「おはよう、奏。凄い嵐ね」
「うん・・庭のイスとテーブル、倉庫にしまっておいたよ」
「ありがとう」
シスイは食卓テーブルのイスに座ると、ふぅと息を吐いた。
まだ眠そうな顔に牙はちらりと見、問うた。
「何をやっていたんだ?」
「ん?タマゴの研究」
「なるほど」
「動かないもんねぇ・・この子」
奏はストーブの前に置いてある真っ赤なタマゴを見て、苦笑した。
まだ動く気配のないタマゴ。
一体どうなっているんだ。
それが不思議でたまらなくなったシスイは夜通しタマゴについて調べていたのだ。
「結果は?」
「さっぱり」
未知だわ・・
そう呟き、獅闇が出したコーヒーを啜った。
果たしてこのタマゴが動くのは一体いつのことになるのやら。
シスイはそう思い、また息を吐いたのだった。
「珀と海輝は帰ってきた?」
「いんや。まだだよ」
「そう・・そんなに多いのかな今回は」
「多分な。きっと夕方まで帰ってこないだろう」
「そっかぁ」
シスイはうーんと伸びをし、雷の方を見た。
雷は目に涙を溜めて、必死に笑いを堪えていた。
「あ、雷・・・?」
「テレビのレポーターがよっぽどツボだったらしい」
「レポーター?」
「実況中継してるイケメンレポーター。嵐で酷い顔だったんだよ」
“ほら”と奏がテレビを指差す。
シスイがふと画面に視線を向けると、“ああ・・”と納得した。
『と、トクサネの海岸はあああ・・・!!こ、この通りのきょ、強風で・・わ!!か、傘が!!』
「あはははは!!!やっぱ耐えらんない・・!!」
「・・・・・・」
「どんまい、だな。レポーターも・・」
獅闇が半目になりながら言う。
「こうやって笑われてることなんて知らないんだろうなぁ・・・」
「そんなことを考えてる暇などないくらいの天気だしな」
すると突然鳴り響く雷鳴。
『か、雷まで鳴ってきました・・!!』
と、やっぱり必死なレポーター。
そしてそんな彼の姿を遠い目で見るシスイ達。
「大変ね、テレビ局の人って」
その呟きに皆一同頷いた。
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