Typhoon




『ホウエン全域に波浪警報・・・・高波には十分気をつけて―――・・・』



テレビのアナウンサーが綺麗な声でそう告げている。
それを耳にしながら、獅闇は窓の外を見た。


揺れる木々。
曇った空。そして豪雨。
ガタガタとなる窓にヒュォォという風の唸り声が時折混じる。



「マジかよ・・・」



“珀は滅多なことでは激昂しないから、それがあった次の日は嵐なんだ”

その言葉が獅闇の頭でリピートした。
まさか牙の言ったことが本当になるとは思っていなかった。



「気のせいじゃねーじゃん…」



獅闇は誰にも聞こえないように呟いた。


ふと、雷を見ると珀が作っておいてくれたポップコーンを食べながらテレビに釘付けになっている。
テレビでは中継が繋がっており、レインコートを着たレポーターが必死で強風に耐えながらその場の状況をリポートしていた。


獅闇もポップコーンを一口食べ、また外に目を向けた。
相変わらずの天気で今にも何かが飛んできそうなくらいに風が強い。



「ひぇー!すんごい風だったね牙」
「ああ・・久しぶりの嵐だな」



奏と牙がびしょぬれでリビングに入ってきた。
何でも奏と牙は庭に置いてあるイスとテーブルを倉庫にしまってきたらしい。
獅闇は立ち上がり、二人にタオルをやりながらコーヒーを淹れる。



「あれ?シスイ達は?」
「シスイはやることがあるからって朝からずっと部屋に篭りっきりで、珀と海輝はジョーイさんに呼ばれてセンターに行った」



ほいと二人にコーヒーを渡す。
それを受け取った二人は顔を見合わせ、納得した表情を見せた。



「センターに行くのは珍しいことじゃないのか?」
「うん、嵐の日は必ずと言って良いほど呼び出されるんだよ。
珀も海輝も手際がいいし、チハヤさんから手当ての手解きうけてるから、けが人の治療をするんだ」
「こういう日はそういった患者が増えるそうで、ジョーイさんとラッキーだけじゃ手が回らないらしい」
「ふーん・・・」




奏と牙はタオルで自分の頭をガシガシと拭き、どかっとソファに座った。
テレビでは引き続き、台風の速報をやっており、突如雷の笑い声が響いた。



「雷・・・」
「あははは!!や、やば・・この人ちょー必死!!今にも飛ばされそうじゃん・・!!
あは・・ははは!!もーだめ・・お腹いた・・!!」
「雷・・レポーターに失礼だぞ」



牙が呆れながら言っても雷は笑うことを止めない。



「だ、だって・・・あははは・・!!このレポーター、イケメンだって世間の奥様方から人気のある人だよ!
ひっでー顔!!あははは!!」
「「「・・・・・」」」



確かに。
端整な顔立ちが雨でぐちゃぐちゃ。
必死に耐える姿はいつもの余裕そうな姿勢からは想像できないだろう。
3人は呆れながらテレビを見つつ、内心笑っていたりするのだった。





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