珀は早歩きで家に向かっていた。
しまった。
あれこれとやっていたらこんな時間になってしまった。
珀は普段なら絶対にしない舌打ちをし、足早に帰路につく。
どれもこれもみんなあの人のせいだ。
珀は心で悪態をつく。
『いいか、ハク。お前はお嬢様をお守りする義務がある』
わかっている。
『チハヤ様をあまり失望させるな』
うるさい・・
『近々、そちらにチハヤ様をお連れするから、それ相応の持成しをするように』
黙れ。
珀は家の前で暫く佇み、自身の苛立ちを抑える。
シスイには決して見せられない醜態。
よし、と呟き姿勢を正してから珀は家に入っていった。
「ただいま帰りました。遅くなってしまい申し訳ございません」
扉の閉まる音がやけに大きく木霊した。
〜続く〜
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