「ご・・ち・・そうさまでした・・・」
「はい、お粗末さまでした」



やっとの思いでカレーを食べ終えたシスイはふぅと息を吐いた。
美味しかった。
美味しかったのだけれども・・・やっぱり腹にくる。



「あー・・・お腹苦しいよー・・」
「何を言っているんですかシスイ。
あんなのは食べたうちに入らないんですよ」



海輝は食器を洗いながら、穏やかに言った。
珀もまだ帰ってきていないが、彼の代わりの説教係はいつも海輝だ。


時々どちらが”おや”か、わからなくなる。



「うー・・・」
「ココアを入れてあげますから・・」
「・・・はぁい・・・」




無理にカレーをお腹に入れた結果。
苦しくて苦しくて仕方ない様子のシスイ。
それに苦笑しながら、海輝はホットココアを入れ始めたのだった。



すると。



ものすごい爆発音。
思わずシスイはびくりと肩を震わせた。
どうやら音の発信源は庭からのようで。



「・・な・・なに・・?」
「雷の特訓のようですね」
「特訓・・・ってアイアンテールの?」
「ええ・・奏から聞くに大分完成に近くなっているようですよ」



そう言う海輝は凄く嬉しそうだった。
例えて言うなら、子供の成長を見守る親のように。
そんな海輝の表情を見て、シスイもクスリと笑った。



* * *





「いい感じいい感じ。その調子でやっていこうね雷」
「威力、狙う位置は完璧だから、後はタイミングだな」
『はぁ・・はぁ・・・は、いっ!!』



砕かれた岩の数々。
ものの見事に木っ端微塵で辺りに散らばっていた。

雷の今まで見たことのない集中力に、奏と牙は息を呑みながらも、一生懸命教えていた。
結果、ここ何日かで独自のアイアンテールを生み出した雷は、一回り大きくなった気がする。




『電気だけじゃやっぱり勝てないと思うんだ』



何日か前。
そう言った雷の顔はいつもの元気いっぱいな顔ではなく、何かに焦っているようなそんな顔だった。




『ほら、僕ってさ、珀達みたいに何でもそつなくこなせるタイプじゃないから・・
だからって別に完璧を目指そうとか・・そう言うんでもないんだ。
でも・・さ。やっぱりこの先、”かみなり”とか”十万ボルト”だけっていうわけにはいかないと思うんだよね・・』




ははっと悲しそうに笑う雷を見た瞬間。
奏の中で何かが弾けた。
海輝が彼を放っておけない理由が今ようやく・・
何となくだけどわかった気がした。


この子は・・・まだ頑是無い。
いくらライチュウに進化して、大人になったからといっても、海輝の言うとおり心はまだまだ子どもなんだ。


奏はそんな事を思い返しながら、雷の頭をポンポンと撫でた。




「雷、その調子。完璧にしてシスイをあっと言わせちゃお」
『!・・・奏・・?』
「よし!!気合入れて行こう!ここじゃもう特訓にならないから、センターのフィールドに行こう。
今度は俺達が相手をする。
タイミングをはかるには実践が一番ってね!」



ほら、何突っ立ってんの雷!牙も!

奏はニコリと笑って、歩き出した。




(海輝・・お前が雷に執着する理由。何となくわかったよ)


フッと笑った瞬間。
さぁぁと風が奏の綺麗な緑髪を靡かせた。







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