シスイがカレーと格闘している一方。
いち早く食べ終わった獅闇は金槌と釘を片手に屋根の修理に勤しんでいた。
最近判明したこと。
獅闇の趣味は日曜大工だそうで、暇があれば家の至るところの修理や、家具制作に没頭している。
気付けば、テラスに一つイスが増えていたり、キッチンの棚が増えていたり、しかもそれがすごく使い勝手がいいようで、仲間内からは評判がいいらしい。
そんな時。
『し、獅闇!!僕の部屋雨漏り酷いんだ!!屋根直してよー!!!』
昨日雷に泣きつかれて頼まれた。
雷の部屋へ行ってみると、大きなバケツが置いてあり、ポトンポトンと音を立てて、水が落ちていた。
(こりゃあ酷い)
ここは立派な家だが、結構年数が経っていそうだと、初めて入った時から思っていた。
この前、直しておいたが家の壁のペンキも剥がれかけていたし。
それをシスイに言うと、
『残念なことにウチには大工仕事できる人がいなくてね。
獅闇がいてくれて、本当よかったわ』
なるほど。
あれだけ完璧な珀も大工仕事はからっきしだそうで、他の奴らに金槌なんかは持たせられないという。
一体、どうなるというんだ。
そうして。
今、獅闇直々、屋根に上がって修理中というわけだ。
「よし・・雷ー!!!どうだー?」
「うん!!落ちてこないよ水!!さっすが獅闇だね!」
獅闇が雷の部屋に向かって大声で聞くと、元気な声が返ってきた。
よし、これで暫く雷の部屋は大丈夫だろう。
獅闇はよっこらせと立つと、括っていた髪を解いた。
さぁと心地いい風が頬を撫でる。
潮風の匂いが何となく心を落ち着かせた。
獅闇は深く息を吸い込むと、屋根から身を躍らせた。
華麗に着地する様はグラエナ姿の彼を思い起こさせる。
「わ!」
「!!」
着地した瞬間。
驚く声が聞こえ、顔を上げて見るとそこには大きな箱を抱えた奏が立っていた。
「ビックリしたー・・獅闇か。
いきなり降ってくるから驚いたよ」
奏は苦笑し、よいしょと箱を抱えなおす。
その箱にはでかでかと『おいしいミカン』と書かれている。
「奏?どうしたんだ?その箱」
「うん?あぁ、これ?珀に頼まれたんだ。
デパートのタイムセールで箱ミカンは珍しいから買っておけって」
「へぇ・・」
獅闇は物珍しそうにミカンの箱を見てから、持っていた金槌を肩に掛けた。
それに気付いた奏は納得したような顔を見せた。
「なーるほど!雷のとこの雨漏り修理してたんでしょ」
「ああ・・って何でわかったんだ?」
「この前、雷がわーわー騒いでたし、ウチで大工仕事できるの獅闇くらいだからさ」
どう?正解?
とウインクした奏は何気にキマっていて、獅闇は少し笑ってしまった。
「うっわ。俺、珍しいもん見ちゃったー」
「あ?」
「獅闇の笑い声・・やっぱ美声だなぁ・・」
ラッキー!と今にも踊りだしそうな足取りで奏は家の中へ入っていってしまった。
「・・・はぁ?」
その後ろでは獅闇が訳がわからないといった顔で佇んでいたのだった。
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