一仕事終えた、シスイ達は博士の家に一泊することにした。
「シスイ様」
「ん?あぁ、珀。お疲れ様」
珀はシスイの隣にそっと腰を下ろした。
そして少し疲れ気味の彼女の顔を心配そうに見る。
「シスイ様こそお疲れ様でした。大丈夫でしたか?例のポケモンの方は・・」
「ええ。思った以上に手こずったけどね・・」
シスイはそう言うと、ソファに身を沈めた。
今は牙も獅闇も擬人化し、それぞれイスに座っている。
「!シスイ様・・・お手を」
「え?」
珀はそう言うや否や、シスイの右手を取った。
そこには軽く火傷したような痕が。
シスイはしまったというように眉を下げた。
「・・・シスイ様」
「・・さっき、ライラに近寄った時にビリッとね。」
シスイは苦笑すると、やんわりと珀の手を退けた。
そして珀の頬を撫でる。
「そんな、まるで自分が痛いような顔をしないで珀。私は何ともないわ」
そう言って撫でていると、珀はその手に自分の手をそっと重ねた。
そして愁いを帯びた瞳でシスイを見つめる。
「貴女の白魚のような手にこの痕が残るようなことがあっては大変です」
何とも気障な台詞だが、顔が整っている彼が言うとまたそれも嫌味に聞こえなく。
獅闇はそう思い、横目で彼らを見た。
「気になるか」
すると横から声が掛かった。
牙が本を片手に獅闇に視線をやっていた。
獅闇は足を組むと、”まぁ、な”とだけ返事をした。
シスイと珀。
彼らには何か見えない絆があるようだった。
他の仲間とも違う何かが。
獅闇はそれを薄々感じ取っていた。
その疑問に答えてくれたのも牙であった。
「あいつ等は生まれたときから一緒にいる」
「・・え?」
静かに話しだした牙に獅闇は顔を向けた。
牙はちらと獅闇に視線をやり、また手元の本に戻した。
「シスイの父親、チハヤのパートナーもそれは立派なアブソルだ」
「・・て、ことは・・珀の父親って・・」
そう獅闇が言うと、牙は静かに頷いた。
「そう。そのチハヤの相棒であり、同じアブソル・・
癸という。
そういう血縁関係上、あいつ等はいつも一緒に、そして将来パートナーになるという運命にあった」
「俺らにはどうやったって代われない絆がある。珀は俺らにも気付かないシスイのちょっとした変化に敏感で、シスイも珀のことは手に取るようにわかっている。
それくらい、あいつ等の仲は広くて深い」
牙の話を聞いて納得した。
あの二人の間に流れる不思議な感じも全て合点がいく。
彼らは生まれながらにして二人で一つという運命を背負い、今まで生きてきたのだ。
珀は彼女を支え、シスイは彼を支える。
他の仲間達には到底わかり得ない深い絆。
「なるほど・・な」
獅闇はそう呟いて、未だ彼女の傷を治療するかしないかで口論している二人を見やった。
そして。
怒涛の1日が過ぎ、シスイ達は家路へとつくのであった。
〜続く〜
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