『あと1km先だ』
「りょーかい」


悲鳴の聞こえるあたりまで来ると。
草むらに尻餅をついている見慣れた博士の姿と対峙しているポチエナの姿が見えた。
恐らく、気付かず彼らの縄張りに入ってしまったのだろう。
ポチエナは今にも噛み付かんばかりの形相でオダマキ博士を睨んでいる。


「と、父さん・・!!」
「だ、だ、大丈夫だ・・」


何が大丈夫だというのだろう。
そんな尻餅をついた状態で言われては説得力の欠片もない。


「獅闇」
『了解』


”睨みつけるからのほえる!!”


シスイは的確に獅闇に指示を与える。

獅闇はぐわりと目の前のポチエナを睨みつけた後、
地獄から這い出たような咆哮をあげた。
するとポチエナはすっかり怯え、一目散にその場を去った。


獅闇は音もなくすっとシスイの横に寄り添うと、終わったぞというように彼女の腕に擦り寄った。
お疲れ様と首元を撫でてやり、シスイは博士に向かい合った。



「災難でしたねぇ・・?博士?」
「し、シスイちゃん・・」
「人を待たせるからこんなことになるんですよ」


不機嫌極まりない表情で博士を一瞥すると、隣にいるまだ年若い少年を見た。



「博士の息子さん?」
「あ、え、は、はい!!ユウキといいます!!」
「そう。私はシスイっていいます。しがないトレーナーよ」
『嘘吐け』


そう突っ込む獅闇を一睨みすると、ユウキに笑顔を向ける。



「よろしくね、ユウキくん」
「あ、は、はい。よろしくお願いします・・」



ユウキはなんとなく納得がいかなかった。
しがないトレーナーなんて絶対嘘だ。
見るからに強そうで綺麗なグラエナを従えて、冷静にその場の状況を判断し、的確にポケモンに指示を与えていた。
無駄のない動き、そして優れたトレーナーの言うことしか聞かないあのグラエナがすごく彼女に懐いているところから見ると、かなりの実力者だろう。


そうユウキが考えていると、シスイはそれを読み取ったのか、ユウキくんは将来有望ねと呟いた。


「・・・え?」
「…いいえ、何でもないわ」
「?」


不思議そうにシスイを見るユウキに誤魔化すようにニコリと笑いかけると、シスイは”オダマキ博士。早速例のポケモンのところへ・・”と催促した。


「あ、ああ・・今連れて行くよ」


そういって、オダマキ博士は歩き出す。
それにシスイはついていった。

ユウキはなんとなく察していた。
これから新米トレーナーになる俺は、あの人から色々教わったほうがいいのかもしれないと・・



「あぁ、それから助けてくれてありがとうシスイちゃん」
「・・どういたしまして」
「言うのが遅いよ父さん・・・」






〜続く〜



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