「ただいまーネンリ、頼んどいた資料持ってきてくれた?」



すると、ドアが開き誰かが帰ってきた。


「うーわうーわ・・・帰ってきやがった・・平然とした顔で帰ってきやがった・・・」
「え?何だって?」
「何でもないですはい!!資料ならそこにぃぃぃ!!!」


噂をすれば何とやら。
帰ってきたのは今話題の中心人物であるチトセ。
何だかとても満足そうだが、やはり黒い性格は変わっていないようだった。


「あれ?お客さん?・・ってし、しし、シスイさんんんん?!?!」



そこでふと獅闇は疑問に思うことがあった。
なぜ彼らはシスイを見て、一瞬だが焦りだすのだろう。
彼らにとってシスイはどれほどの存在なのか。

その疑問に答えてくれたのは意外にも牙だった。


『シスイの人柄に酷く憧れているんだよあの二人は』
「・・・・は?」
『こんなにポケモンにも人にも優しい人間はシスイさんしかいないって豪語してたからな』


なるほど。
獅闇はそう呟き、隣で若干彼らのやりとりに引いているシスイを見た。



「な、何やってんのネンリ!!項垂れている場合じゃないだろ!!
し、シスイさんが来ていらっしゃるんだよ!!ちゃんとコーヒーはお出ししたんだろうね!!」



チトセはネンリの胸倉を掴み、ぐらぐらと揺すっている。
ネンリの顔は今にも昇天しそうだ。


「ち、チトセくん。ちゃんとコーヒー出してもらったからネンリくん離してあげて」
「え?あ、そうなんですか・・そ、それよりシスイさんはまた博士の呼び出しですか?」


そうチトセが眉根を寄せながら聞いた。
その顔にシスイは苦笑して、口を開く。


「ええ。その博士はまだ帰ってこないみたいだから、ここで待たせてもらおうと思って」
「どうぞどうぞ。にしてもシスイさんを待たせるなんてあの馬鹿はかs・・ゴホン。
博士も失礼な人ですね。後できつくきつーく言っておきます」
「あ、ありがとう・・」


するとチトセはシスイの隣にいる見慣れない顔に気づいた。


「あれ?シスイさん、その人は…」



その視線にシスイは新しい家族で仲間よと言うと獅闇の背中を少し押した。
それに少し驚き、シスイに顔を向ける獅闇。


「獅闇、自己紹介」


彼はそれに納得し、ああとチトセの前に立った。


「グラエナの獅闇だ」
「うわ、美声。えっと、僕はネンリの双子の兄さんでエルレイドのチトセです。どうぞよろしく!ここでオダマキ博士の助手もやっているんだ」



チトセはにこりと笑うと、手を差し出した。
なるほど。
ネンリとよく似ているが、チトセには目元に一つホクロがある。



獅闇は「よろしく」と小さく笑い、彼の手を取って握手を交わした。





それから。
ネンリ達は共同論文の作成に移り、シスイは今まで座っていたソファで待つことに。

すると隣に座っていた獅闇が何かを感じて顔を上げた。


「シスイ」
「うん?」
「悲鳴だ」
「・・え?」
「男の悲鳴が聞こえる」


獅闇は立ち上がって、原型の姿になった。


「よく聞こえたわね」
『10kmくらい先の大声なら難なく察知できるさ。
すぐそこの道路で聞こえてきた』
「OK。ネンリくんとチトセくんはここにいて。
もしけが人だったら治療に当たってもらうから」
「了解しました」


シスイは一目散にドアから出て行き、走った。
その隣を平行して獅闇が走る。






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