二階建ての一軒家。
部屋の数はリビングなどの広間を除き、八部屋。
そこにリビング、キッチン、風呂、トイレ、書斎がしっかり完備されている。


庭に続くテラスには牙愛用のロッキングチェアと木で出来たイスが数個とテーブル。
庭もそれなりに広く、色とりどりの花で溢れていた。


ただ塀にはいくつもの円形状の焦げ目があり、毎日雷と海輝が行っている、命がけのキャッチボールの凄さが垣間見える。


獅闇はキョロキョロと首を巡らせ、物珍しそうに見ていた。


随分立派な一軒家だ。
部屋の数が八つ。つまりポケモン一匹に一部屋ということで。
聞くに、自分の部屋もちゃんと空いているとか。
自分が感動する性格じゃないことはわかっていたが、ここまでくると、若干感動を覚えてしまうのは気のせいではないだろう。


そうあれこれ考えているうちに目の前の主人は、リビングと思わしき部屋に入っていった。



「珀、海輝。ありがとう」
「どういたしまして。獅闇も来ましたね」



珀はニコリと笑って楽にしていいのですよと優しく言った。
隣にいた海輝も笑って自己紹介をした。



「初めまして、ミロカロスの海輝といいます。
よろしくお願いしますね」



”絶世の美男子”


まさにそんな言葉が獅闇の頭に流れた。
目の前の芸術品のような彼がミロカロスなのは頷けた。
綺麗過ぎる。
珀と並ぶともうそこで美術館が完成しそうだ。



『グラエナの獅闇・・だ。よろしく』



直視できない眩しさ故、少し視線を逸らしてしまった獅闇。
だが、海輝はそんなことも気にせず”はい”と微笑んだ。


すると海輝の背中からひょっこりと現れた金髪が綺麗な少年、雷。
興味深そうに眼前の獅闇を見つめ、ぐっと顔を近づけた。



『!?』
「初めまして!僕はライチュウの雷!!よろしく!!獅闇!」


そのままニカっと笑ってソファにどかっと座った。
獅闇はおずおずとしていたが、やがて少し笑って


『よろしく』


と再度挨拶した。



「お!帰ってきてたんだね、グラエナクン!」



玄関から顔を出したのは、買い物袋を両手に提げた奏。
珀のおつかいに行っていたという。



『奏・・?』
「あったり!!あ、名前もらったんだっけ?」



そう言って荷物をテーブルに置く奏は雷に棒つきキャンディーを手渡していた。



「ありがとう奏!あ、グラエナの名前は獅闇だよ」
「なーるほど!んじゃあ、これから家族として仲間としてよろしくね獅闇!」
『!!・・・ああ』



シスイはそれを微笑ましく見つめ、お昼にしようかと立ち上がった。



「シスイ様は休んでいてください」
「え・・でも・・」
「シスイ、ここは俺達が。体調はまだ万全じゃないでしょう?」
『!シスイ・・具合悪いのか?』



獅闇が心配そうに見上げた。
シスイは何でもないよと続けようとしたが。



「そうなんだよー。シスイはまだちょっと頭痛が治ってないみたいでねぇ・・」
「ちょ、奏・・」
「うんうん。顔もちょっと青白いしなぁ・・」
「あ、雷まで!!」


「「というわけで」」


奏と雷はシスイの腕を掴むと強制的にソファに座らせた。



「今日の昼御飯は珀と海輝。
晩御飯は獅闇の歓迎パーティーと称して俺と珀と海輝で作るからね!
だから、シスイはここで休んでて!
いい?!一歩でも動いたら、雷と牙で止めるかんね!!」



そうだそうだーと雷は獅闇の隣に座り、”獅闇も止めてね”と耳打ちしていた。
獅闇は頷くと、一瞬にして人型になる。




「わかった」
「へへっ!これでシスイは動けないぞー・・・てか、
獅闇、かっこいいなぁー」
「わ。本当だ。ワイルド系イケメンだね」


なんて奏と雷が嘗め回すように獅闇を見た。



「あんま見んなよ」
「「び、美声・・!!」」



思った以上の甘い声にその場にいた者達はすっと一歩退いた。

そう例えるなら。
蜂蜜のように甘い声。

それでいて心地いいテノール。



「ポケモンの姿だとわかりにくかったけど・・・すっげー・・」


雷は”これメスポケには効果抜群だね”と面白そうに言った。

そのやり取りを耳にしながら、珀達はすでに昼ご飯を作り始めている。
すると雷が思い出したかのようにばっと立ち上がり、獅闇の腕を掴んだ。



「?」
「ウチん中、案内してあげるよ!!ここ、結構部屋数あるし、迷わないようにと、
あと獅闇の部屋も案内する!」
「あ、いいねそれ。俺も付き合うよ」



と奏と雷は獅闇を連れてリビングを出て行った。


居間に残ったのはソファで軟禁状態のシスイと、
向かえのソファで本を読む牙。
そして、キッチンでせっせと昼食の準備をしている珀と海輝。
見張る役は結局牙と海輝、そして珀になってしまったようだ。



「・・・よかった・・・」



ふとシスイが呟いた言葉に向かえに座っていた牙が視線を上げ、
珀と海輝も耳を傾けているようだった。



「シスイ」
「んー?」
「獅闇は思った以上に大人だ」
「・・うん」
「すぐに打ち解けられるだろう」
「そだね・・」


牙はそれだけ言ってまた本に視線を戻した。
シスイは頭だけを上に向け、息を深く吐いた。
確かに頭痛はしていたが、今ので少しよくなった気がする。
するとキッチンから”シスイ様”と珀の呼ぶ声が聞こえた。



「なぁに、珀」
「紅茶でもお淹れ致しましょうか」
「ううん・・今はいいわ。ありがとう」
「いいえ。何かあればいつでもお申し付けください」


その言葉にシスイは頷いた。






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