一方戻って、家の中。
シスイはミルクティーを飲みながら、あることに気づく。


「あれ・・」
「どう致しましたシスイ様」
「海輝は?」
「海輝はまだ起きておりませんよ」



もうそろそろ起きてくるかと思われますが・・

そう言う珀の声を聞きながら、シスイは壁に掛かっているミミロルとポッチャマの時計に目をやると7:15。
海輝は大体いつも7時か7時前に起きてくるが、珍しく7時を過ぎていた。


「珍しいこともあるものね」
「何やら海輝は昨日遅くまで起きていたようですし・・
少し遅くても無理ないのでは」
「そうね・・」


そう苦笑して、シスイはまたティーカップに手を伸ばす。
ミルクティーはまだ温かい。



『―――許さない・・・・許さない・・・!!!!』
「っ!!!」



突如襲う激しい頭痛。
脳内に流れる声と血塗れたビジョン。

シスイは思わず持っていたカップから手を離してしまった。


カップは床に落ち、割れ、辺りに散らばった。



「!シスイ様!!!」



珀は慌てて駆け寄る。
シスイの顔から血の気が失せていた。



「シスイ様!!」
「っ・・ごめ・・ちょっと頭痛がして・・」
「お怪我は・・・・」
「う、ん。大丈夫・・」
「よかった・・今、破片を片付けます。シスイ様はそこのソファで横になっていてください」


珀はシスイを支えるように、ソファまで運び、ゆっくり寝かす。
そして傍に畳んで置いてあったブランケットをそっと掛けた。

突然、脳内に流れ込んできた憎悪の念。
血塗れた映像。
だけど、どこかで助けを求める声。
しかし、それがどこにいるのか定かではない。


シスイは深く息を吐き、前髪を掻き上げた。
寒い。
体中の血液が冷えていくようだ。



「珀!!」
「雷、奏、牙」
「今何か割れる音が・・・シスイ?!」



雷が真っ先にソファに横になっているシスイに近寄った。
続いて奏と牙も彼女の傍に行った。


「どうしたの?!シスイ・・」
「顔が真っ青だな・・大丈夫か」



牙がシスイの頬に手を当てる。
奏は珀にどうしたのかと聞いていた。



「頭痛に見舞われたようで…」



すると、階段の方から走るような足音が聞こえてきた。
そしてリビングのドアが勢いよく開き、海輝が慌てた様子で入ってきた。


「珀!」
「海輝、おはようございます」
「おはようございます・・・ではなくて!!今、何か割れる音がしたのですが・・」
「シスイ様がティーカップを落とされて」
「シスイは・・」
「そこのソファで・・」


珀はソファを指差し、海輝に教えた。


「シスイ・・!」
「あら・・おはよう、海輝」
「・・・大丈夫ですか・・・」
「私は大丈夫。それより、海輝。挨拶」
「・・・すみません。おはようございます・・シスイ・・」
「えぇ、おはよう」



未だ青い顔でシスイはニコリと笑った。
海輝は彼女をひと撫でし、珀の手伝いに行った。
食卓にはおいしそうな朝ごはんが並んでいる。

シスイはゆっくり起き上がって、食卓に向かおうとしたが、全力で珀に止められ、仕方なくその場で朝食を摂ることになったのだった。






結局シスイはその後、自室へと強制送還され、今はベッドに寝かされている。
あれからあの”声と映像”は流れてこない。
しかし、近くに助けを求める者の存在があるのは確かだ。
それが気になっておちおち寝てもいられない。


助ける者の存在。
確実にそれは”ポケモン”で。
あの映像から考えて、大体目星はついている。



シスイはゆっくり起き上がった。
よし、頭痛はもうしない。
早く、且つ静かに彼女は服に着替えた。

そして下の階にいる彼らに気づかれないように彼女はそっと窓を開け、そこから身を躍らせた。






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