夕方近く。
サイユウシティに行っていたシスイと珀、そして牙が帰ってきた。
帰路の途中、終始無言だったシスイは険しい顔のまま、家に入っていく。
その様子を後ろから心配そうに珀と牙が見つめていた。
「あ、おかえり、シスイ…」
「ただいま、雷」
眉間に皺を寄せたシスイ。
一際低い声に雷は肩を揺らした。
シスイはそのまま青炎の方に向かうと、何も言わずに思い切り抱きしめた。
いきなりのことに驚く青炎。
それでもシスイは彼を抱きしめたまま動かない。
「シスイ…?」
青炎がそっと声を掛けるが、反応しない。
しかし、自分の肩が少しずつ濡れていくことに気付いた。
「ごめん…ごめんね…青炎…」
震えた声が青炎の耳に響く。
シスイの肩が震えている。
「貴方の背負っているものを…私も一緒に背負うから…!」
はっとした。
シスイはそこまで考えてくれていたのだと。
しかし、青炎は申し訳なさを感じて少し俯いた。
違う、違うんだと青炎は心の中で思う。
シスイにそんな顔をさせたくないと。
背負うのではない、と。
「シスイ」
青炎はそっとその愛しい人の名を呟く。
ようやくシスイは顔を上げ、青炎を見つめた。
綺麗なオッドアイが揺らめく。
青炎は顔を上げたシスイの頭に手を置くと、ゆっくりと撫で始めた。
「青炎…」
「大丈夫、大丈夫。背負わなくても、共有、できる。シスイはそこまで考えなくて、大丈夫」
シスイだけじゃなくて、みんなとも「共有」したい。
ちょこっと重たい、かもだけど。
青炎はそう言って、小さく笑った。
シスイは目を見開いて、それからようやく笑顔を見せる。
その顔にその場にいた皆が安堵の表情を浮かべた。
やはり、彼女には笑顔が一番似合う。
「重くなんかないよ!青炎も僕たちの家族だからね!!」
雷はシスイと青炎に抱きつくと、にこにこと笑った。
珀はそのやり取りを見守った。
そしてほっと安心したように笑い、静かにキッチンに入ってお茶の準備をするのだった。
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