彼女がリビングに行くと、皆一斉にシスイに近寄ってきた。
「みんな・・ごめんね・・」
シスイは一言謝った。
けれど、皆、安心しきったような、穏やかな表情をしていた。
「シスイ・・よかった・・お前がいなくなるのではないかと・・」
不意に牙がシスイを抱きしめた。
「悪かった・・・すまなかった・・・!俺はお前を・・守れなかった・・・」
あの記憶以来の牙のこの声。焦り。
彼女を掻き抱く腕の強さが物語っていた。
そして後ろからも。
「ごめんね・・・シスイ・・・ごめん・・・」
奏がめずらしく大粒の涙を流している。
珀も顔を歪めて、海輝も俯き、獅闇はただただ目を瞑っていて、雷は大声で泣いた。
各々が自責の念に駆られていた。
「いいの・・・いいのよ皆。そんなに痛そうな顔をしないで。そんな顔をしているほうが私は辛いわ」
正面から抱きしめている牙の頭をゆっくりと撫で、サラサラとした髪を梳き。
後ろから抱きしめている奏の手をぎゅっと握った。
「ほら!!皆、新しい仲間の紹介よ!」
もう彼らにはこんな思いはさせない。
そう言うように、シスイは明るく少し声を張った。
そして、彼女はなかなか離れない牙と奏を離し、隣にいる青炎を見上げた。
標準的なバシャーモより少し大きい彼はちらとシスイを見て、ゆっくりと口を開いた。
『バシャーモの・・青炎・・デス。よろしく』
極端に低くもなく、かといって高くもない心地の良い声。
『みんなのことは・・名前、ちゃんと知ってる。フライゴンの奏、ボーマンダの牙、ミロカロスの海輝、ライチュウの雷、グラエナの獅闇・・・アブソルの珀、そして…
俺を救ってくれたシスイ』
青炎は慈しむように隣にいるシスイを見て、ふわりと笑った。
その様子にすっかりと元気になった彼ら。
しかし。
まだ一つ解決されてない問題があるのを珀は忘れてはいなかった。
〜後編に続く〜
こんにちは、管理人のべにです。
連載最終話、前編お送りしました。
長くなりそうだったので前編、後編に分けます。
後編はただいま執筆中ですので今しばらくお待ちください。
そして新しい仲間の青炎くん、よろしくお願いします(笑)
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